ニホンザルにおける吸啜窩の存在の検討

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タイトル別名
  • Examination of the existence of sucking fossa in Japanese macaques

抄録

<p>母乳育児が推奨される中、現代の母親にとって断乳・離乳の時期は大きな問題となっている。ヒトという霊長類がいつまで授乳をする生物なのかに関して、多くの客観的な情報が提供されることで、離乳や断乳の時期について示唆が得られると考えられる。ヒト乳児の口蓋には、線維質で構成された副歯槽堤により形作られる、吸啜窩というくぼみが存在する。乳児はこの吸啜窩に乳首を引き込み固定することで、安定した吸啜を行うことができる。この吸啜窩は発達とともに消失するとされるが、吸啜窩の消失という形態発達が離乳という機能発達に関与している可能性がある。この仮説が正しいとすれば、吸啜窩の消失の時期から、離乳時期についての情報が得られる。本研究では、この仮説を検証するために、吸啜窩の消失と離乳との関連を、ヒト以外の霊長類で確認することを目的とした。京都大学霊長類研究所所蔵のニホンザルの上顎骨標本38個体分(生後0.1~154.3週齢)を組み立て、口蓋を3Dスキャナーで撮像、解析した。その結果、ヒトで定義される吸啜窩と同様のくぼみは、ニホンザル乳児個体では確認されなかった。上顎の形状から、ニホンザルでは、特別なくぼみを発達させることなく、乳首を固定、安定した吸啜を行うことができる可能性が示唆された。この結果から、ヒトにおける上顎形態の変化が、吸啜窩を進化させたという仮説が新たに提起された。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390565134838040064
  • NII論文ID
    130007813500
  • DOI
    10.14907/primate.35.0_51_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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