高崎山ニホンザル群におけるスキャンサンプリング法の有効性

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  • Survey Effectiveness of Scan Sampling for Japanese Macaques at Takasakiyama

抄録

<p>大分市の高崎山には、65年前から餌付けされているニホンザルの群れが2群生息している。2018年の調査によると、各群れの個体数はB群639個体、C群534個体であり、交替でサル寄せ場に下りてきて、1日に数回撒かれるコムギやサツマイモの餌を得ている。高崎山群では、野生のサルには見られない「石遊び行動」や「人慣れ」などの行動を観察することができるため、本校科学部では2010年より餌付けによるニホンザルの行動変化を調査してきた。サルの行動調査では、フォーカルサンプリング法で個体ごとのデータを集めて対象の行動を分析するが、高崎山群は個体数が多く、サル寄せ場で観察できるサルは自由に動き回るため、個体識別や長時間の追跡が困難であった。そこで、高崎山群のように個体数が大きい群れの行動調査におけるスキャンサンプリング法の有効性を検討した。グルーミング行動と石遊び行動について、調査エリアの総個体数と各行動を行う個体数を同時に調査した。さらに、調査間隔を5分、3分、1分に変えた場合の結果を比較分析するとともに、高崎山群における本校の先行研究の結果との比較を行った。その結果、調査総個体数に対するグルーミングを行う個体割合は、餌撒き後に緩やかに増加し、次の餌撒き時間が近づくと緩やかに減少することが分かった。石遊び行動を行う個体割合は、餌撒き直後から急激に増加し、数分後にはピークとなり、10分後にはほぼ0%になることが分かった。また、調査間隔を変えると、総個体数調査ではその変動の様子に差が見られなかったが、石遊び行動調査では行動割合のピーク時間にずれが生じた。これらのデータ収集方法の比較検討から、スキャンサンプリング法を用いた高崎山群の行動調査は有効であると考えた。総個体数の変動など、緩やかな変化は5分間隔の調査でその特徴を知ることができるが、石遊び行動などの急激に変動する行動調査では、1分間隔の調査が適当であると考えた。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390565134838291840
  • NII論文ID
    130007813585
  • DOI
    10.14907/primate.35.0_72_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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