サンゴ礁研究を豊かにするために

書誌事項

タイトル別名
  • Enriching coral reef study

説明

<p>本発表に至る演者の研究の経緯とその視座</p><p>サンゴ礁研究は、チャールズ・ダーウィンがビーグル号による航海中に得た仮説、すなわち裾礁→堡礁→環礁へと基盤の沈降説に伴い礁地形が移行することを、帰国後に多くの資料と海図を駆使して、それぞれのタイプの分布を世界地図に明示し、結果として海洋底の沈降が証明されたとした(1842)。これを契機にそれを検証する試錐が行われ、礁形成論が活発化した。ここでは詳述する紙幅もないが、デイリーの氷河制約説以降、第四紀の海水準変動と礁形成の関係の研究が盛んになった。こうした流れを受けてHori,N.(1977)は、礁 を6タイプに分け、それらが氷期/間氷期の海水準変化に伴って規則的な地理的分布を示すという作業仮設に基づいて、海図による地形計測を行い、その結果を氷期と間氷期の礁形成海域とともに明示した。この研究によってサンゴ礁研究の関心が、礁縁付近から礁湖内だけでなく、礁斜面に及び、三次元的な礁地形形成論の展開につながる一つのきっかけとなった。その後、演者は海図の計測から得た結果を、さらに実測値で検証すべく、礁斜面の測深調査を奄美・沖縄地域だけでなく、南太平洋やインド洋・紅海と調査地域を広げ、実証を続けている。</p><p></p><p>なお、現在は礁斜面だけでなく、礁斜面の沖方も含めた浅海底の詳細な地形研究が菅浩伸らによって精力的に行われている。</p><p></p><p>一方、サンゴ礁は、人間の生活空間、とくに漁労活動を中心とした環境利用の空間でもある。この点に注目して、与論島を中心に、島民、とくに漁民がサンゴ礁の微地形について、いかなる方言名称が与えているか、詳細な調査を行った(堀、1980)。この研究を通して、人間がサンゴ礁とどのように関わっているかがあぶりだされた。さらに、この研究を踏まえて、サンゴ礁と島の民俗との関係に関心を広げ、南の島々の自然観や世界観との関係も模索している(例えば、堀、2012)。</p><p></p><p>現在、渡久地健は、これをさらに深めて、生業との密接な関係を解き明かしつつある。</p><p>サンゴ礁の地理学的研究の更なる展開にむけて</p><p> サンゴ礁、とくに現成礁に注目すると、海図のデータの粗密に象徴されるように、浅海底の部分の情報量の欠落が顕著である。しかし、礁地域の人間にとっては、そここそ生活空間の主要な空間である。礁地形研究だけでなく、生活空間としてのサンゴ礁研究に目を向けることにより、地理学研究に海域と陸域を結びつけ、両者がいかに不可分の関係にあるかという大切な視座を与えることになる。換言すれば、地理学的な空間単位の再認識につながるといえよう。</p><p></p><p> 発表時には、こうした視座の重要さを堀(1997) の「風土の三角形」の世界観も意識した視座と、地理学的スケールとしての時空間スケールを意識した視座との関係を論じたいと思う。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390565134842684032
  • NII論文ID
    130007822305
  • DOI
    10.14866/ajg.2020s.0_357
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ