<i>Porphyromonas gingivalis</i>がヒト口腔粘膜上皮細胞に与える影響の3次元構築モデルによる解析
書誌事項
- タイトル別名
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- Analysis of the Influence of <i>Porphyromonas gingivalis</i> on the Human Oral Mucosa with a Three-dimensional Construct Model
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抄録
<p> 目的 : 口腔粘膜上皮細胞は, 細菌および細菌から産生されるさまざまな毒素からの曝露に対して重要なバリアとして機能している. 歯周病原細菌であるPorphyromonas gingivalis (P. g.) は, 上皮組織におけるバリア機能の破綻を生じさせることにより歯周病の進行に深く関与し易感染性の状態を生み出すと考えられているが, 上皮組織にどのような影響を与え, どのようにしてバリア機能が壊されるかの詳細なメカニズムについてはわかっていない. そこで本研究では, P. g. がヒト口腔粘膜上皮細胞に与える影響について検討を行った.</p><p> 材料と方法 : ヒト口腔粘膜上皮細胞株とラット線維芽細胞からなる3次元構築モデルを作製し, P. g. ATCC33277菌粉砕物を上皮層に滴下する群としない群としてそれぞれ培養した. その後, 上皮細胞の気相液相境界面培養 (Air-Lift) を行い, 4~8日間培養後に3次元構築モデルサンプルを回収し, HE染色および免疫組織染色法を用いて形態観察を行った. また上皮のみを回収し, DNAマイクロアレイ解析およびqRT-PCR法を用いて遺伝子発現の解析を行った. さらにバリア機能を評価するために, Air-Lift 6日目のサンプルを用いてTERおよびFITC-dextranによる解析を行った.</p><p> 結果 : P. g. 菌粉砕物を滴下すると, Air-Lift 6日目に有意な上皮層の厚みの増加を認めた. マイクロアレイパスウェイ解析の結果, 細胞周期および細胞間接着に関連する遺伝子発現の変化を認めた. 細胞周期においてCDKN1A mRNA発現量の有意な低下を認め, 免疫組織染色においてKi67陽性細胞数の割合が有意に増加した. 細胞間接着において, E-cadherin染色強度および染色面積の有意な低下を認めた. 組織の電気的抵抗値は有意に低下し, dextranによる組織の物質透過性試験の結果は有意に増加した.</p><p> 結論 : 3次元構築モデルにおいて, ヒト口腔粘膜上皮細胞は, P. g. への曝露により細胞増殖が亢進するとともに細胞間隙が拡大し, 細胞間接着タンパク質が減少する. これによって, 上皮バリア機能が低下し, 歯周病変の重症化に関与すると考えられる.</p>
収録刊行物
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- 日本歯科保存学雑誌
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日本歯科保存学雑誌 63 (2), 144-155, 2020
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390566775133052032
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- NII論文ID
- 130007840632
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- ISSN
- 21880808
- 03872343
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
- KAKEN
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可