鍼臨床における皮膚疾患有害事象に関する文献レビュー

  • 古瀬 暢達
    大阪府立大阪南視覚支援学校 森ノ宮医療大学鍼灸情報センター
  • 山下 仁
    森ノ宮医療大学鍼灸情報センター

書誌事項

タイトル別名
  • 文献レビュー 鍼臨床における皮膚疾患有害事象に関する文献レビュー
  • ブンケン レビュー シンリンショウ ニ オケル ヒフ シッカン ユウガイ ジショウ ニ カンスル ブンケン レビュー

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説明

【目的】鍼臨床における皮膚疾患有害事象に関する文献を調査し、鍼治療の安全性向上のための方 策を検討した。 <br>【方法】医中誌Web およびPubMed を用いて、国内鍼臨床における皮膚疾患の有害事象(因果関係 を問わず治療中または治療後に発生した好ましくない医学的事象)症例報告を検索した(2019 年 6 月検索)。対象期間は1980 年以降とした。 <br>【結果】33 文献44 症例が収集された。埋没鍼が原因のものは、局所性銀皮症17 文献22 症例、亜 急性痒疹1 文献1 症例、色素沈着1 文献1 症例であった。患者の体質(基礎疾患や金属アレルギー 等)が原因と考えられるものは10 文献12 症例であった。その他、直流鍼通電による色素沈着、 悪性黒色腫、不適切な治療(医師による注射針を用いた刺絡療法)によるアトピー性皮膚炎の悪 化、有棘細胞癌があった。年代別では、1980 年代が9 文献11 症例、1990 年代が12 文献18 症例、 2000 年代が10 文献13 症例、2010 年代が2 文献2 症例であった。 <br>【考察】今日では禁止されているが、過去に行われた埋没鍼が原因の局所性銀皮症が約半数と大き な割合を占めていた。重篤な症例として、皮膚癌が2 例報告されていたが、常識の範囲外の長期間・ 過剰な治療によるものと、時系列の一致のみで因果関係に関する記載のないものであった。また、 患者の体質に由来する皮膚病変が少なからず報告されていた。金属を体内に刺入するという鍼治 療の性質上、金属アレルギー等の副作用を引き起こす可能性を完全に排除することはできない。 事前に皮膚疾患の既往がないかを確認するとともに、患者に皮膚症状が現れた場合は治療を中止 し専門医への受診を勧めるべきである。年代別では、2010 年代の症例報告数が特に少なかった。 <br>【結語】近年、鍼治療後に発症した皮膚疾患の報告は減少していた。これらの症例から学び、卒前・ 卒後の安全教育に反映していくことが重要である。

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