日本のエコシティ推進における特徴と課題

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  • ニホン ノ エコシティ スイシン ニ オケル トクチョウ ト カダイ

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抄録

エコシティ(eco-city)とは,エコロジー(ecology:生態学)のエコとシティ(city:都市)を組み合わせた言葉であると一般的には理解されているが,いつ,どの国で,そして,どのような背景の下で,この用語が最初に使われ始めたのかは明らかでない。その日本語訳としては,多くの文献において環境共生都市という用語が使われている。この用語が意味するところは,分かりやすくいうならば,環境に配慮をした都市である。よって,環境共生都市が目指すところは,環境への負荷が少ない都市づくりであり,具体的には,汚染物質あるいは二酸化炭素を含む温室効果ガスを極力排出しない,資源を有効に使う,そして自然と共生するといった様々な面において環境への負荷が少ない都市づくりである。日本においては,1993 年に建設省(現在の国土交通省)が開始した環境共生モデル都市事業において環境共生都市が提唱されており,その「環境共生モデル都市制度要綱」(1993 年7 月8 日)には,「環境負荷の軽減,自然との 共生,アメニティ(amenity:快適環境)の創出等による良好な都市環境の形成の推進を図る」と謳われている。現在では,環境共生モデル都市事業は継続されていないようであるが,2000年以降,政府は環境モデル都市事業,環境未来都市事業,あるいはスマートシティ事業など環境に配慮をした都市づくりに向けた様々な事業をスタートさせている。これらの事業は名称こそ異なるものの,基本的には環境に配慮をした都市づくり事業であることから,エコシティ関連事業として括ることとが出来る。本稿では,日本政府によるエコシティ推進のための各種事業,そして日本の自治体による先駆的かつ意欲的なエコシティ推進に向けた具体的取り組みを通して,日本のエコシティ推進における特徴の一端を浮き彫りにすると共にその課題について考察する。 本稿の構成は,次のとおりである。まず,第2 節では,日本政府が推進する様々なエコシティ関連事業をそれらのビジョン,すなわち,どのようなまちづくりをするのかについての構想に基づいて分類し,エコシティ関連事業の全体像を俯瞰する。第3 節では,日本のエコシティ推進において重要かつ今後さらに関心が高まるであろう循環型社会,コンパクトシティ,エネルギーの地産地消といった3 つのテーマにおける北九州市(循環型社会),富山市(コンパクト シティ),飯田市(エネルギーの地産地消)の先駆的かつ意欲的な取り組み事例を通して,日本のエコシティ推進における特徴の一端を浮き彫りにする。そして,第4 節では,日本のエコシティ推進における課題を3 つの視点,具体的には,人口減少・高齢化社会への対応,インフラのスクラップ・アンド・ビルド,そして地域の自然資源を活かしたエネルギーの地産地消の視点から論じる。最後に,本稿の内容をまとめてむすびとする。

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