独我論的体験とは何か

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タイトル別名
  • What is the "Solipsistic Experience"?
  • 独我論的体験とは何か : 自発的事例に基づく自我体験との統合的理解
  • ドクガロンテキ タイケン トワ ナニ カ : ジハツテキ ジレイ ニ モトズク ジガ タイケン ト ノ トウゴウテキ リカイ
  • Its Integral Understanding in Relation to the "I-experience", Based on Spontaneous Cases
  • 自発的事例に基づく自我体験との統合的理解

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抄録

渡辺・金沢(2005)において初めて心理学的テーマ化が試みられた独我論的体験を,自我体験と統合的に理解することが,本稿の目的である。その方法はディルタイに発する解釈学的方法の流れを汲むが,得られた回想記述テクストを一人称的に読み,体験事例の内的構造を図解することによって明示化するところに特色が求められた。両体験の統合的理解は,調査事例に基づく従来の研究でも試みられていなかったわけではないが,文芸作品などに出現した「自発的事例」がより豊かな内容を含むため,本稿ではこれを主たる考察の対象とした。まず代表的な自発的事例同士の比較により,独我論的体験が自我体験と区別されるゆえんが他者との類的関係の自明性の破れにあることが,内的構造図解の方法によって見いだされた。次に木村(1973)の自明性に関する議論の検討に基づき,自我体験を個別的特定的自己同一性の自明さの破れ,独我論的体験を類的存在としての自己の自明さの破れと,「コインの両面」として理解する,最も簡明な定義に達した(「類的存在」とはヘーゲル哲学からの借用語である)。またこの新たな定義は,哲学上の独我論とは独立した,心理学的資料のみに基づく定義であるとされた。さらに,R. ヒューズの小説中の挿話の考察より,幼い子供のファンタジーが独我論的体験の新たな定義の例解となっていることが示された。これらの考察を踏まえ,発達論,精神病理,宗教心理への将来展望が語られた。

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