口腔内のフッ化物による歯列矯正用Ni-Ti超弾性合金線の材質劣化とその対策

  • 横山 賢一
    九州工業大学大学院工学研究院 物質工学研究系

書誌事項

タイトル別名
  • Degradation of mechanical properties of Ni-Ti superelastic orthodontic wire induced by fluoride in oral cavity and countermeasures
  • コウコウ ナイ ノ フッカブツ ニ ヨル シレツ キョウセイヨウ Ni-Ti チョウダン ショウアイ キンセン ノ ザイシツ レッカ ト ソノ タイサク

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抄録

<p>本稿では,口腔内のフッ化物による歯列矯正用Ni-Ti超弾性合金線の材質劣化について,腐食に伴う水素吸収が及ぼす影響の観点から,これまでの我々の研究成果を整理して紹介する.本合金は,酸性フッ化ナトリウム水溶液中において短時間で多量の水素を吸収して脆化する.中性フッ化ナトリウム水溶液中では,水素吸収速度は遅く,水素脆化する前に活性経路割れによる破断が起こる.また,フッ化物の濃度や溶液のpHなどの環境因子や,合金中の水素の存在状態やマルテンサイトなどの材料因子によって,脆化は影響を受ける.脆化は,マルテンサイト変態と水素との動的かつ相互的な作用による欠陥の形成と蓄積が本質と考えられるが,さらなる研究が必要である.これらの知見に基づき我々が提案したフッ化物に起因する材質劣化の対策の一つは,極微量の過酸化水素を添加し,自然浸漬電位を貴化することによる水素吸収抑制である.</p>

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