光機能化チタンインプラントによる顎骨・咬合再建

  • 廣田 誠
    横浜市立大学附属市民総合医療センター歯科・口腔外科・矯正歯科

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  • —基礎研究から臨床応用まで—

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チタン材料の骨結合能は,「生物学的老化現象=バイオロジカルエイジング」と呼ばれる表面への炭化物の沈着により経時的に低下していくとされる。バイオロジカルエイジングはわずか1か月で骨結合能を本来の3分の1にまで低下させるが,紫外線照射によって回復することが明らかとなり「チタンの光機能化」として提唱された。演者これまで臨床においては歯科インプラントの光機能化がearly failure(早期脱落)のリスクを有意に減少させること,インプラントの安定度を有意に上昇させることをこれまで報告してきた。一方でこれをチタンメッシュに応用した骨造成に関わる基礎的研究を行い,骨欠損部に露出させたインプラント表面の骨形成量は光機能化によって有意に増大し,骨-インプラント接触率が約6倍,骨結合強度が約3倍となる研究成果を報告した。こうした研究成果から,チタン材料の光機能化が顎骨欠損症例における骨・咬合再建に有用ではないかと考え,その効果を検証することを目的とした臨床研究として,腫瘍,顎骨骨髄炎および顔面外傷術の顎欠損症例に対する光機能化インプラントと腸骨海綿骨骨髄移植およびチタンメッシュによる埋入同時骨造成術を実施した。術前に欠損部の硬・軟組織の状態を評価した。手術はすべて2回法で実施し,埋入から4か月後の2次手術時に全例顎堤形成術を行い,遊離皮弁を有する症例では粘膜移植を実施した。共振周波数を利用したオステルISQによりインプラント安定度を埋入時・2次手術時に評価した。実施症例は13症例15部位で,インプラント埋入本数は50本であった。また骨欠損が著しい3例において垂直的骨延長術を術前に実施した。ISQ値は埋入時10未満が5本,10〜30が9本,31〜59が11本,60以上が25本であったが,2次手術時はすべて60以上であった。インプラントはすべて骨結合が得られたが,補綴開始後に1本喪失した,喪失を含めた4本のインプラントで有意な骨吸収が認められ,経過観察期間2年におけるsuccess lateは92%であった。Failureに関わる因子としては埋入前の遊離皮弁が挙げられたが,埋入時の初期固定・骨支持不良との相関は認めなかった。光機能化チタンを用いたインプラント埋入同時骨造成では,埋入時の状態が不安定であっても一定期間間後には咬合負荷可能となる十分な骨結合を得ることが可能であり,著しい顎欠損症例における顎骨再建・咬合再建に有効であると考えられた。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390566775154906240
  • NII論文ID
    130007880432
  • DOI
    10.11277/stomatology.69.51
  • ISSN
    21850461
    00290297
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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