P-1-E06 重症心身障害児者の呼吸障害における在宅ハイフローセラピーの効果

  • 雨宮 馨
    島田療育センターはちおうじ 診療科 さいわいこどもクリニック 在宅診療部
  • 黒川 洋明
    島田療育センターはちおうじ リハビリテーション科
  • 阿部 恵
    島田療育センターはちおうじ 通所科
  • 藤岡 由香
    島田療育センターはちおうじ 看護科
  • 野村 芳子
    島田療育センターはちおうじ 診療科
  • 積田 綾子
    島田療育センターはちおうじ 診療科
  • 中村 由紀子
    島田療育センターはちおうじ 診療科
  • 小沢 浩
    島田療育センターはちおうじ 診療科
  • 宮田 章子
    さいわいこどもクリニック 在宅診療部

この論文をさがす

説明

はじめに ハイフローセラピー(以下、HFT)は、非侵襲的換気療法の選択肢の一つである。非侵襲的陽圧換気療法に比べ、利用者への侵襲や違和感が少なく導入しやすい。小児科領域でも使用されているが、慢性の呼吸障害を有する重症心身障害児者(以下、重症児者)への使用報告はない。今回、重症児者に在宅HFTを行い、呼吸状態が改善したため報告する。 対象 当センター外来通院している重症児者4例[脳性麻痺3例(アテトーゼ型2例、痙直型1例)、奇形症候群1例、年齢4〜38歳]。全例で年1〜2回、肺炎での入院があり、嚥下障害による経管栄養、座位でのむせ込みがみられ、吸引を必要としていた。2例は夜間の低換気があった。 方法 チェスト社のVivo30をCPAP設定圧8〜12H2Oで使用、1例は酸素投与を併用した。3例は夜間装着し、成人アテトーゼ1例は覚醒後1時間のみ装着した。 結果 夜間装着3例は朝に口腔から分泌物排出が観察された。また導入前のSpO2低下に改善がみられ、日中の活気も改善した。全例で分泌物、吸引回数の減少がみられ、1例は吸引が不要となった。慢性的な二酸化炭素値上昇を認めた2例は、値の低下がみられた。HFT導入後、半年間で4例中2例は入院がなく、1例は肺炎で入院するが、HFTを継続し、短期間で回復した。1例は数カ月安定していたが、肺炎罹患後、喉頭気管分離術の選択に至った。 考察 HFTの効果として、陽圧効果、呼吸仕事量軽減、死腔の洗い出し効果、肺胞換気の増大、加温加湿による気道分泌除去効果などがあげられている。重症児者に効果があった要因として、主に軽度の陽圧と加温加湿による気道分泌除去の効果が考えられる。また、HFTは鼻カニューラ装着のみで加温加湿された気流は冷風に比べ快適なものとなっており、感覚過敏がある重症児者でも受け入れが可能であった。装着が楽である点は家族が治療を継続できた要因として大きい。今後、HFTは重症児者の呼吸障害へ選択肢として検討する必要がある。

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

問題の指摘

ページトップへ