P-2-G04 瞬目を指標とした視覚刺激受容評価

DOI
  • 林 恵津子
    埼玉県立大学 保健医療福祉学部 社会福祉子ども学科
  • 加藤 るみ子
    独立行政法人 国立病院機構 東埼玉病院 小児科
  • 田中 裕
    川村学園女子大学 文学部 心理学科

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抄録

目的 重症心身障害のある人は行動表出に制限があるため、視覚刺激に対して振り向きや追視、注視で応答をすることが難しい例が多い。療育では視覚刺激を呈示することがあるが、刺激を受容しているか行動反応のみでは判断が難しい。自発性瞬目は刺激への定位や注意と関連することが先行研究により指摘されている。重症心身障害のある人でも瞬目は観察される例が多い。そこで、本研究では瞬目を指標として視覚刺激の定位と注意の維持について評価することにした。 方法 5名の協力者は視覚刺激に対する振り向きや追視、注視が観察されなかった。関わり前のベースライン場面、視覚刺激を提示しない条件として素話場面、視覚刺激を呈示する場面としてパペット呈示場面を設定した。支援者の関わる両場面ともストーリー内容と呈示時間は同じとした。協力者の瞬目をビデオカメラで録画した。1/33秒単位で瞬目の出現と眼瞼の閉・開の所要時間(瞬目の持続時間)を同定した。 結果 5名とも、ベースライン場面では、瞬目の出現は乏しくその持続時間も長かった。ベースライン場面と素話場面の瞬目を比較すると瞬目の頻度は上昇し、持続時間は短縮した。関わりにより覚醒が高まったと考えられた。瞬目を素話場面とパペット呈示場面で比較すると、5名の協力者の内4名に瞬目の様相に差異が見られた。3名はパペット呈示当初において、持続時間の短い瞬目の出現が多く観察された。このような瞬目の様相から、視覚刺激への定位が考えられた。また、1名は、パペット呈示場面において素話場面よりも持続的に瞬目の頻度が上昇し、持続時間の短い瞬目の出現が観察された。視覚刺激に対する注意の維持が考えられた。 結論 行動表出上は視覚刺激に対して振り向きや追視、注視などの明確な行動反応が観察されない事例でも、瞬目では反応が観察された。瞬目は重症心身障害児者の刺激受容評価に有効な指標であった。

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