マウス耳下腺細胞でミオシン軽鎖キナーゼは細胞内カルシウム流入過程のcapacitative calcium entry, non-capacitative calcium entry を相反する形で制御する

  • 齋野 朝幸
    岩手医科大学解剖学講座細胞生物学分野
  • 熊谷 美保
    岩手医科大学歯学部口腔保健育成学講座小児歯科学・障害者歯科学分野
  • 佐藤 洋一
    岩手医科大学解剖学講座細胞生物学分野 岩手医科大学全学教育推進機構

書誌事項

タイトル別名
  • MLCK reciprocally regulates capacitative calcium entry and non-capacitative calcium entry in intracellular calcium influx process in mouse parotid gland acinar cells

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抄録

<p>目的: アラキドン酸 (AA) は, さまざまな細胞の細胞内カルシウム濃度 ([Ca2+]i) を調節する. 細胞内Ca2+上昇機構として, 細胞内貯蔵場からのCa2+放出と細胞外からのCa2+流入の2つがあげられる. 本研究では, その中でも細胞外からのCa2+流入に着目した. マウス耳下腺腺房を用い, タプシガルジン(Tg)誘発性, およびAA誘発性のCa2+流入におけるセリン/スレオニンキナーゼの一つであるミオシン軽鎖キナーゼ(MLCK)の効果を, 細胞内Ca2+ 測定試薬のFura-2を用いて解析した.</p><p>材料と方法: 雄性スイスウエブスターマウスを用い, 炭酸ガス麻酔下で屠殺後, 耳下腺を取り出しコラゲナーゼ等を用いて腺房細胞単位にまで消化した. その後細胞にFura-2/AMを導入し標本とした. 各種試薬を用いて刺激し, Fura-2の特性から380nmと340nmの比をとったものを Ratioとして示し, この蛍光強度比の変化を[Ca2+]i変化の指標とした.</p><p>結果: MLCK阻害剤のML9およびwortmannin単独では, [Ca2+]i に影響を及ぼさなかった. ML9およびwortmannin存在下で, Tg誘発性のCa2+流入(capacitaive Ca2+entry: CCE)が抑制された. これに対し, AA誘発性Ca2+流入(non-capacitative Ca2+entry: NCCE)は wortmannin存在下では減弱したのに対し, ML9存在下では増強した. ML9存在下で, PKAが関与するカリキュリンA共存下でのAA誘発性Ca2+上昇の作用増強に対し, MLCK阻害剤はこの NCCEを増強させる結果となった. また, MLCK 阻害剤の投与順序を変更してもカリキュリンA 共存下でのAA誘発性 Ca2+上昇に違いは認められなかった.</p><p>結論: MLCKはCCEを増強させる反面, AA誘発性の Ca2+流入である NCCE を抑制する. また, PKAはNCCE増強に働くが, その近傍に存在するMLCKによって修飾を受け, お互いに協調して NCCEに働いている可能性がある.</p>

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