Similarities between the Two <i>Avalokita Sūtras</i> in the <i>Mahāvastu</i>

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  • <i>Mahāvastu</i>に含まれる二つの<i>Avalokita Sūtra</i>の類似性
  • Similarities between the Two Avalokita Sutras in the Mahavastu

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<p>説出世部に属する仏教文献Mahāvastuには,Avalokita Sūtra(観察経)という同名の経典が二つ含まれている.その内,第一のAvalokita Sūtraは降魔成道の仏伝をその主題とし,第二のAvalokita Sūtraは降魔成道の仏伝記事を記載しながら,戒蘊の功徳や仏塔崇拝の功徳に関する説法の記述をも含んでいる.この第二のAvalokita Sūtraには,仏塔崇拝の功徳が説かれる箇所で逐語的に平行する文献が二つ存在する.一つは寂天のŚikṣāsamuccayaに見られる断片的な引用文であり,一つはチベット訳の単一経典である.そしてそれら二つの平行テキストは共にAvalokana Sūtraと呼ばれ,仏塔崇拝の記述を専らの主題としている.先行研究は,Mahāvastuの第二Avalokita SūtraとこれらAvalokana Sūtraは同一の源泉を有していると指摘する.第二Avalokita Sūtraのプロトタイプを想定すれば,それはチベット訳のAvalokana Sūtraの形態によく似ており,序文の大部分も仏伝の記述も有していないものだったと思われる.</p><p>本稿では,Avalokana Sūtraには見られない,第二Avalokita Sūtra独自の序文箇所に着目した.第二Avalokita Sūtraの序文は,釈迦牟尼が菩提座周辺でなした観察のことを‘avalokita’という述語で指示し,続く仏伝部分が釈迦の回答(vyākaraṇa)であることを示唆しながら,経典の主題へと導入していた.この事情は第一のAvalokita Sūtraとよく合致する.第一Avalokita Sūtraも菩提座周辺での観察を‘avalokita’と呼び,自らを‘vyākaraṇa’(分別経)であるとしながら,仏伝記事に導入していた.この類似性はAvalokana Sūtraには認められないものである.</p><p>結論として,これら二つのAvalokita Sūtraの符合は,以下のことを示唆しうるとした.即ち,Mahāvastuが自らの外部に存在していたAvalokana Sūtraを取り込む際,もともとMahāvastu内に存在していた第一Avalokita Sūtraの内容と形態を模倣することで,第二Avalokita Sūtraを形成したという発達段階である.また,二つのAvalokita Sūtraは経典内部の仏の行為を‘avalokita’と呼んでいるのに対し,Avalokana Sūtraの経題‘Avalokana’はコロフォンなどの経典外部からの名付けであるという差異に注意すべきだと指摘した.</p>

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