東南アジア関係3か国における生け簀養殖発展過程の比較分析

  • 松浦 勉
    National Research Institute of Fisheries Science, Fisheries Research Agency

書誌事項

タイトル別名
  • Comparative Analysis of Development of Fishcage Culture in Three Southeast Asian Countries

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抄録

<p>東南アジアにおける生け簀養殖は,従来,天然種苗を用いて小規模に行われていた。1980年代になると,タイではアカメの人工種苗を利用した生け簀養殖が盛んに行われ,あわせて,ハタ類も養殖されるようになった。その後,マレーシアでは,タイのアカメ養殖技術を導入し,アカメ,フエダイ類,ハタ類の生け簀養殖が盛んになった。また,フィリピンでは,数100年前から天然種苗を用いたミルクフィッシュの養殖が盛んに行われているが,1990年代後半にミルクフィッシュが生け簀により養殖されるようになった。</p><p>タイとマレーシアにおけるアカメ,フエダイ類,ハタ類の養殖生産量は,従来から,生け簀養殖の方が池養殖よりも多い。フィリピンにおけるミルクフィッシュとハタ類の養殖生産量は,従来,ほとんど池養殖により生産されていたが,1990年代になって生け簀養殖が行われるようになった。ブラックタイガー養殖が病気により生残率が低下した池では,従来,ブラックタイガーの代わりにアカメやハタ類を養殖することが多かった。しかしタイでは,2000年頃以降,ブラックタイガーの生残率が低下した池に,病気にかかりにくい南米産のパナメイエピを養殖するようになったので,池養殖によるアカメとハタ類の生産量が減少している。</p><p>ハタ類養殖は,タイでは,中級の国産天然種苗を利用しているので1990年代後半以降価格が低迷しているが,マレーシアでは高級な輸入人工種苗を利用しているため2000年以降価格が上昇している。</p><p>マレーシアの生け簀養殖における着業当時と2004年のアカメ,フエダイ類,ハタ類の魚種間生産量比率をみると,アカメは半減したが,フエダイ類が同じ比率で推移し,ハタ類が倍増した。また,魚種別利益をみると,フエダイ類が最も多い。</p><p>生け簀養殖は,池養殖に比べて,生産性が高く,池の造成費に比べて初期投資が低い上,魚の臭みがないので価格が高く,経営的に有利である。</p>

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