猪苗代湖集水域の水循環に伴う物質収支に関する研究

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タイトル別名
  • Study on mass balance associated with water circulation in Lake Inawashiro catchment

抄録

<p>Ⅰ はじめに 湖沼の水循環を考える上では、集水域全体の物質収支を考えることが重要である。法政大学水文地理学研究室では、湖沼と集水域の長期的な水環境変化について調査をおこなっており、猪苗代湖に関してはすでに年間を通じての観測によって、猪苗代湖集水域河川の水質季節変動と湖水のシステムについては明らかにしている(小寺ほか、2009)ものの、湖水の中性化問題にはまだ到達できていない。そのため、本研究では最新の現地調査(2020年7月)と過去のデータ及び既往研究との比較を行うことによって中性化の現状をより明らかにし、猪苗代湖中性化問題の核心へと迫りたい。 Ⅱ 研究方法 猪苗代湖の熱収支、物質収支等の水文特性を明らかとして、猪苗代湖の水環境を理解したうえで、湖沼の水質は流入河川の水質による影響が大きい。よって猪苗代湖流入河川を含めた湖集水域全体の流域特性も明らかとしたい。 今回は2020年7月24日・25日・26日にかけておこなわれた現地調査の報告もあり、現地では気温、水温、pH、RpH、電気伝導度(EC)の測定をおこなった。試料は実験室で処理し、TOCやイオンクロを用いて主要溶存成分(N+、K+、Ca²+、Mg²+、Cl-、NO3-、SO4²-)の分析をしている。 Ⅲ 結果と考察 pHは猪苗代湖大橋・酸川橋で3.4、月輪大橋で4.0と酸性の性質が見られた。その他の地点においては、およそ6.0〜7.0と中性を示した。湖水も6.5を示し中性である。RpHは、pHと同じく猪苗代湖大橋・酸川にて3.4と変化がなかった。それ以外の地点では7.0前後の値を示した。ECは酸川橋で690μS/㎝と今回の調査で最も高い値が見られた。猪苗代湖大橋で440μS/㎝の値が見られ、それ以外では300μS/㎝前後の地点もあるものの、おおむね150μS/㎝以下であった。湖心は128μS/㎝であった。流量は猪苗代湖に最も流入する長瀬川で最も大きい値が示された。月輪大橋では33.0t/sという流量であった。 Ⅳ おわりに 猪苗代湖の中性化に関しては、環境への影響が大きく、水質の急激な悪化のために生態系の変化などが起こる可能性がある。今回の現地調査結果より、湖水の性質の変化が明らかになったが、今後も年間を通した継続的な調査をおこない、水収支や物質収支の観点からも考察を進めたい。 参考文献 小寺浩二・森本洋一・斎藤圭(2013):猪苗代湖および集水域の水環境に関する地理学的研究(4) -2009年4月〜2012年11月の継続観測結果から-, 2013年度日本地理学会春季学術大会発表要旨集.</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390567901496929920
  • NII論文ID
    130007949290
  • DOI
    10.14866/ajg.2020a.0_90
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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