-
- 山 泰幸
- 関西学院大学
書誌事項
- タイトル別名
-
- Narratives and Stories in Environmental Folklore: Following on from Motoori Norinaga's Concept of <i>Mono no Aware</i>
- 物の哀れをしるより外なし : 環境民俗学の認識論
- モノ ノ アワレ オ シル ヨリ ソト ナシ : カンキョウ ミンゾクガク ノ ニンシキロン
この論文をさがす
説明
<p>柳田国男を創始者とする日本民俗学は,その学問的性格において,本居宣長ら江戸期の国学者の影響を受けているとされる。特に,柳田の心意論は,本居宣長の歌論・物語論で展開された「物のあはれを知る」説の影響が指摘されている。本稿では,本居宣長の「物のあはれを知る」説に遡り,その発想を手がかりとしながら,「語り」や「物語」をめぐる環境民俗学の捉え方,認識論について考察する。</p><p>宣長は,歌の発生を,事物に触れて「あはれ」を深く感じる人の心情に求め,人が「あはれ」を感じるのは,事物が「あはれ」であると認識できるからであるとし,「知」と「感」を一体とする認識論を提示する。また,人に語り聞かせることでみずからを慰め心を晴らすように,歌には「語り」と同様の意味がある点や,聞き手を前提とした歌の社会性を説いている。一方,物語論では,読者の立場から,今を昔になぞらえて,みずからの心を晴らすものとして,物語の意味を捉えている。さらに,作者もまた「物のあはれを知る」物語の享受者の立場から,「物のあはれ」を読者に知らせるために,物語を書き出すとする。宣長は,物語の作者,物語中の人物,物語の読者が,物語の享受者として「物のあはれを知る心」によって重なり合うものと捉えているのである。</p><p>以上のような宣長の歌論・物語論を手がかりにして,本稿では,民話を活用したまちづくりの事例を検討する。それによって見えてくるのは,民話を通じて,今を昔になぞらえて,みずからの置かれた状況や心情を理解し,心を晴らす,「物のあはれを知る」物語の享受者としての生活者の姿である。</p><p>民俗学者は,生活者の「語り」から,彼らの「物のあはれを知る心」に動かされ,彼らを登場人物とした物語(民俗誌)を描くことで,みずからが感じ,心を動かされた「物のあはれ知る心」を伝えるのである。</p>
収録刊行物
-
- 環境社会学研究
-
環境社会学研究 23 (0), 53-66, 2017-12-20
環境社会学会
- Tweet
詳細情報 詳細情報について
-
- CRID
- 1390567901499235584
-
- NII論文ID
- 130007940436
-
- NII書誌ID
- AN10498448
-
- ISSN
- 24340618
-
- NDL書誌ID
- 028736066
-
- 本文言語コード
- ja
-
- データソース種別
-
- JaLC
- NDLサーチ
- CiNii Articles
- KAKEN
-
- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可