リグニン代謝工学によるバイオマス植物の育種

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タイトル別名
  • Lignin Metabolic Engineering in Grass Biomass Plants for Primary Lignin Valorization
  • リグニン タイシャ コウガク ニ ヨル バイオマス ショクブツ ノ イクシュ
  • Lignin metabolic engineering in grasses for primary lignin valorization

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抄録

<p>再生可能資源の内,最も蓄積量の多い木質(リグノセルロース)バイオマスからの工業原材料生産に関する必要性と関心が,近年世界的に頓に高まっている。木質多糖の成分利用については,セルロースナノファイバーなど高次構造を生かした利用技術開発や糖化発酵技術開発が進展しているが,リグニンの大規模利用は,長きに亘りパルプ廃液リグニンの燃料・分散剤・粘結剤としての利用などに限られてきた。このリグニン利用の難しさは,主に⑴リグニンの構造の複雑さ,⑵単離の難しさ,及び⑶誘導体化起点となる官能基が限定されていること,に起因する。</p><p>そこで,今後のリグニン利用技術開発においては,全く新たな変換反応系の開拓とともに上記の困難を緩和した利用し易いリグニンの作出を代謝工学により新規に進めることが緊要と考えられる。さらに,リグニンは多糖の1.4倍程度の高位発熱量を有し,バイオマスの熱利用,例えばペレット化後の直接燃焼などでは,リグニン含有率が多い方が有利である。実際,少なくとも当面は木質の直接燃焼利用の需要があり,栽培に要する面積減少のためにも,バイオマスの発熱量増加に繋がるリグニン増量は一つの重要な育種目標である。</p><p>リグノセルロースは,樹木系と非樹木系(主にイネ科植物)に分けられる。一般にイネ科植物のリグニンは木材リグニンより単離が容易であり,イネ科植物ではリグノセルロース成分の分離特性が木材より優れている。木材が紙パルプ生産や梁材・柱材の生産に必須であることは論を俟たないが,バイオマス生産に必要な耕地・林地面積や化学成分利用に注目した場合,イネ科植物は今後一層重要になると考えられる。以上に鑑み,著者らは,イネ科バイオマス植物における代謝工学を進め,リグニン増量やリグニンの構造複雑性の緩和に関する成果を得てきた。本稿では,その概要を説明している。</p>

収録刊行物

  • 紙パ技協誌

    紙パ技協誌 74 (11), 1067-1070, 2020

    紙パルプ技術協会

被引用文献 (1)*注記

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参考文献 (30)*注記

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