都内地域中規模病院における高齢者に対する経皮的血栓回収療法

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タイトル別名
  • Comparison of mechanical thrombectomy for patients with acute ischemic stroke over 85 years and younger: A Single Center Experience
  • トナイ チイキ チュウキボ ビョウイン ニ オケル コウレイシャ ニ タイスル ケイヒテキ ケッセン カイシュウ リョウホウ

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抄録

<p> 高齢化の只中にある本邦の急性期脳卒中診療において,高齢者を経皮的血栓回収療法で治療する機会が増えている一方で,高齢者に対する適応については一定の見解が得られていない.当医療圏において病床数200床以下という中規模病院である当院の急性脳主幹動脈閉塞に対する経皮的血栓回収療法の治療成績について報告し,高齢者に対する治療適応および転帰を検証して,今後の課題を明らかにすることを目的に研究を行った.2017年2月から2019年8月までの期間に当院で経皮的血栓回収療法を行なった急性脳主幹動脈閉塞症例を対象とし,高齢者を85歳以上と定義して,患者背景・治療内容を比較検討した.対象期間内に経皮的血栓回収術を施行した症例は30例,平均年齢は81.1±11.4歳,男性14名,女性16名.うち85歳以上の高齢者は13例.発症前mRS 0‒2は高齢者群で5例(38.5%),非高齢者群では15例(88.2%)と有意差をもって高齢者群が少なかった.有効再開通は高齢者群が9例(69.2%),非高齢者群は13例(76.5%).症候性頭蓋内出血は高齢者群,非高齢者群ともに1例,90日後mRS 0‒2は高齢者群が0例,非高齢者群は9例(52.9%),90日後mRS 0‒3は高齢者群が1例(7.7%),非高齢者群は11例(64.7%)と有意差をもって高齢者群が少なかった.本研究における高齢者の臨床転帰は,有効再開通率に差がなかったにもかかわらず,非高齢者と比較して良好とは言えなかった.臨床転帰に影響を与える因子は,単変量解析で,平均年齢,高血圧,発症時NIHSS,発症前mRS 0‒2の割合,発症から患者搬入までの時間(02D),鼠蹊部穿刺から病変到達までの時間,鼠蹊部穿刺から有効再開通までの時間(P2R),脳梗塞の病型であった.高齢者に対する経皮的血栓回収療法を行うにあたって今後当院に求められることは,治療者側の手技の習熟性をより高めること,患者背景を見極め,画像所見の適切な基準を設けて治療適応を判断すること,限られた人的資源を補う上で,都内という地域性を生かして近隣の病院と連携を図り,迅速な転院を搬出できる体制を維持していくことが重要であると考えられた.</p>

収録刊行物

  • NEUROSURGICAL EMERGENCY

    NEUROSURGICAL EMERGENCY 26 (1), 51-59, 2021

    特定非営利活動法人 日本脳神経外科救急学会 Neurosurgical Emergency

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