1995年ユニバーシアード大会を活用した福岡市の国際都市づくり

書誌事項

タイトル別名
  • International City Strategy in hosting the Universiade 1995 Fukuoka

説明

<p>1.研究目的</p><p> 本研究では,スポーツ・レクリエーション振興,スポーツイベント開催を活用した福岡市の国際都市づくりの展開について検討することを目的とする。</p><p></p><p>2.福岡市のスポーツ振興の歴史</p><p> 戦後,1948年の福岡国体を機に現在の舞鶴公園に平和台陸上競技場・球場などの施設が整備された。その後,平和台は,プロ野球の本拠地も置かれ,1965年より後に日本で5件目の「世界陸上遺産」に認定(2020年)された福岡国際マラソンのスタート・ゴール地点になるなど,福岡市における戦後のスポーツの象徴的な場所・拠点となった。</p><p> その後,福岡市は1972年に1978年のアジア大会誘致に乗り出したが失敗した。しかし,これを契機として1975年に「福岡市市民スポーツ振興総合計画」が策定され,16年間におよぶ長期的なスポーツ振興が図られることとなった。この計画では,5年ごとに計画の見直しがなされ,「近隣区施設」,「地区施設」,「広域圏施設」の順で重点的に整備が進められた。「みんなのスポーツ」として全国的に生涯スポーツ実践の機運が高まる1980年代,計画は「スポーツ・レクリエーション」と路線が修正され,結果として市民のスポーツ施設需要に対応していった。さらに1981年には,1990年の国体の福岡県開催が決定したことで,東平尾公園をメイン会場とするための大規模施設整備が進められた。</p><p> 1989年,福岡市はユニバーシアードの1993年大会の開催地として立候補したが,招致活動の遅れから落選する。しかし,その直後から1995年大会の開催を目指して招致活動を行った結果,同年に1995年ユニバーシアード福岡大会(以下福岡ユニバ)の開催が決定した。</p><p></p><p>3.ユニバーシアード福岡大会の開催</p><p> 福岡ユニバは,1995年9月に開催された学生を対象にした国際総合競技大会である。162の国・地域から5,740人の参加者を迎え,12競技144種目の競技が開催され,836,675人の観客を集客した。大会運営においては,12,700人の市民ボランティアが参加している。</p><p> 大会の開催にあたっては様々な取組みが実施された。1991年には,開催を総合的に支援するために設置された「’95 ユニバーシアード福岡大会市民の会」の会員は,224,000人に達している。1994年に開始された「校区ふれあい事業」では,市内140の小学校区ごとに国・地域を担当して応援・交流を行った。また,「ユニバーシアードフェスティバル」として,大会開催直後までの128日間で162の芸術文化に関するイベントを主催・共催・協賛し、福岡ユニバのイベントとしての雰囲気の醸成が図られた。</p><p></p><p>4.スポーツを活用した国際都市戦略</p><p> 福岡ユニバの招致を開始した1980年代末は,福岡市政にとっても重要な転換点であったといわれている。1988年,「第6次福岡市総合計画」にて「海に開かれたアジアの交流拠点都市」という構想が掲げられ,アジアを意識した国際都市への展開が図られていった。1989年には,1984年より準備されていた市制100周年事業「アジア太平洋博覧会」が開催され,翌年「アジア太平洋都市宣言」を行い,アジア太平洋における「交流と協調の場」としての機能を重視していく。福岡ユニバの大会報告書の招致に係る記述にも,「アジア太平洋博覧会」が「国際化や都市整備に弾みをつけるイベント」となったことが記されている。さらに,福岡市は,福岡ユニバの大会ビジョンで「アジア太平洋の交流都市FUKUOKA」,大会終了直後に発した「国際スポーツ都市宣言」の中で「世界に開かれたアジアの交流拠点都市」を謳っている。実際,福岡ユニバの開催以降,福岡市はスポーツの国際大会を継続して開催するようになった。</p><p> 以上のように,福岡市は長期的に施設整備と共に市民スポーツの振興を図り,その両者のスポーツ資源を活用しながら福岡ユニバの開催を試みている。同時に,福岡ユニバ開催当時の市長は「ユニバーシアードは街づくりの一環」と表現している通り,福岡市は福岡ユニバの国際総合競技大会としての知名度や祝祭性を資源化し,アジアを意識した国際都市戦略の手段としていったとも考えられる。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390569000754392192
  • NII論文ID
    130008006584
  • DOI
    10.14866/ajg.2021s.0_118
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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