まつぼり風の発生メカニズムと阿蘇カルデラ内の冷気層の発達

書誌事項

タイトル別名
  • The Mechanism of Local Wind “Matsubori-kaze” and Relationships with Cold Air Pool Formed in Aso Caldera

説明

<p>熊本県北東部の阿蘇カルデラに存在する峡谷(立野峡谷)では峡谷からカルデラの外にかけて強い東風(まつぼり風)が吹くことが知られている。まつぼり風は発生要因からおろし風型と冷気外出流型の2タイプに分けられる。本研究では、冷気外出流型のまつぼり風(以下、「まつぼりのⅡ型」とする。)について、地上観測及び、GPSゾンデを用いたカルデラ内の鉛直観測からそのメカニズム及び鉛直構造の解明を目的とする。</p><p> 解析対象の事例は九州全体が高気圧に覆われた2015年10月28日夜—29日朝及び、翌29日夜—30日朝の事例とする。地上観測地点はカルデラ内外及び立野峡谷内にそれぞれ複数地点設置した。観測項目は温湿度、風向風速、気圧である。鉛直観測はGPSゾンデ(明星電気社製RS-11G)を用いて、カルデラ内北部(480m a.s.l.)から2015年10月28日午後10時と明朝10月29日午前5時に放球したデータを用いる。2015年10月28日午後10時に放球したGPSゾンデの結果から地上から約100mの接地逆転層が形成されていることがわかる。明朝、2015年10月29日午前5時放球では、その逆転層の厚さが約200m近くまで発達していることがわかる。</p><p> 立野峡谷出口付近の風向風速及びカルデラ内のSLPからカルデラ外のSLPを引いた差の時系列をより、二夜ともにカルデラ内の方がカルデラ外より高圧となり、立野峡谷で東風が発生している。</p><p> 次に総観スケールでの気圧傾度をMSMの地上気圧データから求めた。その結果、事例中における気圧傾度の東西成分に注目すると、まつぼり風とは逆傾度となっていた。このことは総観スケールにおける気圧傾度に打ち勝つ程度、カルデラ内が高圧になったことを意味する。その高圧になった要因はGPSゾンデ観測で捉えた冷気湖であり、その冷気が流出することにより、まつぼり風Ⅱ型が発生した。</p><p> まつぼり風Ⅱ型と気圧差の時系列より、まつぼり風Ⅱ型は同じメカニズムでも初日と二日目で異なる風速変動の特徴が現れた。これは海風前線の特徴と酷似しており、まつぼり風Ⅱ型のメカニズムは海風のアナロジーで説明できる可能性がある。</p>

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キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390569000754393472
  • NII論文ID
    130008006605
  • DOI
    10.14866/ajg.2021s.0_182
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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