総括:大学入試における地誌学習成果の評価について

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タイトル別名
  • The assessment of regional geography learning outcome at university entrance examinations
  • ソウカツ : ダイガク ニュウシ ニ オケル チシ ガクシュウ セイカ ノ ヒョウカ ニ ツイテ

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抄録

<p>1.はじめに</p><p></p><p> 本報告では,シンポジウムの総括として,4名による報告を受けて「大学入試における地誌学習成果の評価」について検討する.</p><p></p><p>高等学校現場(特に大学への進学者の多い普通科等の高校)では,地理の授業でセンター試験(令和3年度入試からは大学入学共通テスト)の高得点を目標とした授業が一般に行われてきた.特に世界地誌学習においては, 地域について網羅的に教師が説明する静態的地誌的学習が行われ,知識中心の暗記的な授業として批判されてきた.</p><p></p><p>一方,新学習指導要領で新設される「地理探究」の地誌学習単元「現代世界の諸地域」で身に付ける思考力,判断力,表現力等は,「現代世界の諸地域について,地域の結び付き,構造や変容などに着目して,主題を設定し,地域的特色や地球的課題などを多面的・多角的に考察し,表現すること」と示されており,静態地誌的学習では対応が難しいと考える.思考力等を発揮して解く問題が重視される大学入学共通テストの方向性と関連付けながら,これからの地誌学習をどのように実践するべきか検討していきたい.</p><p></p><p>2.センター試験と共通テスト試行調査における地誌問題</p><p></p><p> センター試験での地誌の取り扱いは,いわゆる地域地誌の大問に加えて,平成28年1月実施のセンター試験からは比較地誌の大問が出題されてきた.地域地誌では地形・気候の自然分野から人文分野まで基本的に静態地誌的に出題されている.受験生の地誌学習成果を満遍なく測るという大学入試の性格上,動態地誌的な問題になり難いのはいたし方ない面もあろう.今回のテーマである「アメリカ地誌」を取り扱った大問は,本試験では地理Bが平成24年度,地理Aが平成20年度が最後の出題であった.なお,比較地誌の大問で北アメリカが取り上げられることはなかった.</p><p></p><p> 一方,共通テストの試行調査の地誌では,平成29年はヨーロッパ,平成30年はオセアニアが出題されている.これら試行調査では大問としての比較地誌がなくなったものの,30年度ではオーストラリアとカナダ,オーストラリアとニュージーランドの移民について出題され,比較地誌の視点から共通性や差異性について分析するとともに,その要因を考察する小問が出題されている.</p><p></p><p>3.大学入学共通テストの方向性に基づいた地誌問題</p><p></p><p>大学入学共通テストは,高大接続改革の一環として実施される.令和3年度大学入学共通テストの問題作成方針では,①大学入試センター試験における問題評価・改善の蓄積を生かしつつ,共通テストで問いたい力を明確にした問題作成,②高等学校教育の成果として身に付けた,大学教育の基礎力となる知識・技能や思考力,判断力,表現力を問う問題作成,③「どのように学ぶか」を踏まえた問題の場面設定の3点が示されている.また,地理A・Bの問題作成方針には「地理にかかわる事象を多面的・多角的に考察する過程を重視する.地理的な見方や考え方を働かせて,地理にかかわる事象の意味や意義,特色や相互の関連を多面的・多角的に考察したり,地理的な諸課題の解決に向けて構想したりする力を求める.問題の作成に当たっては,思考の過程に重きを置きながら,地域を様々なスケールから捉える問題や,地理的な諸事象に対して知識を基に推論したり,資料を基に検証したりする問題,系統地理と地誌の両分野を関連付けた問題などを含めて検討する」と示されている.</p><p></p><p>当日の発表では,これらの方針に沿った令和3年1月実施の大学入学共通テストのアメリカ地誌の大問を取り上げ,思考力等を発揮して解く問題とはどのような問題か,動態地誌や比較地誌の学習成果の測定としてどのように考えられるか,受験生に身に付けてもらいたい資質・能力や高校現場に求めたい授業の実践等について,大学入試センター試験のアメリカ地誌の過去問題と比較しながら報告したい.</p>

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