風台風・雨台風と比較した「高温台風」の気候学的特性

DOI

書誌事項

タイトル別名
  • Climatological characteristics of “heat typhoons” as compared to typhoons producing extreme winds and precipitation

抄録

<p>はじめに</p><p> 台風による被害は雨と風,そして高潮に伴うものが大多数を占める.一方で,台風は南方からの暖気移流やフェーン現象などによって高温をもたらすことがしばしばある.しかしながら,台風接近に伴う高温についてその実態を明らかにした研究は,著者らが知る得る限り見当たらない.</p><p></p><p> そこで本研究は,台風接近に伴う高温出現の特性について明らかにすることを目的とする.また,極端な高温をもたらす「高温台風」の抽出を行い,極端な降水をもたらす雨台風と暴風をもたらす風台風との比較検討を行う.</p><p></p><p> </p><p>手法</p><p> 本研究は,台風接近日(全国いずれかの気象官署等から300km以内に台風の中心が位置していた日)における気温や降水量などの気候偏差に着目する.それぞれの台風接近日について,解析対象期間(2002-2016年)各年の前後10日間を気候値の統計期間とし, 台風接近日の観測値との偏差を算出した.観測値は全国の地点番号47から始まる気象庁観測地点(155地点)の地上観測データを用いた.</p><p></p><p> 次に,極端な高温をもたらす台風(以後,「高温台風」と呼称)の抽出を行った.抽出条件は,全国の気象官署等20地点以上で台風接近日の日平均気温が気候値の95%ile値を上回っているものとした.極端な降水と暴風をもたらす雨台風と風台風についても,日最大積算雨量と日最大風速を用いて同様に抽出した.</p><p></p><p> </p><p>結果と考察</p><p> 図1に,台風接近時の日平均気温の偏差を示す.日平均気温偏差は0.2~0.6℃の正の値となっていることから,台風接近時には全国的に高温になりやすいことが分かる.気温偏差は太平洋側より日本海側で高い傾向を示している.一方で,台風接近時の日最大風速と日積算雨量の偏差はともに太平洋側で正の偏差が大きい(図省略).</p><p></p><p> 解析対象期間中に日本に接近した179個の台風のうち,53個が高温台風として同定された.高温台風接近時の日平均気温偏差は1.0~3.4℃であり,全台風接近時より大きくなっていた.高温偏差が特に大きいのは中国地方から北陸地方にかけての日本海側であった.</p><p></p><p> 雨台風,風台風に同定された台風はそれぞれ81個,84個であった.高温台風と風台風の年間発生個数の間には有意な相関が認められた.また,風台風と雨台風と比較すると,高温台風の経路は日本海を通過する割合と台湾付近を通過する割合が大きい(図2).前者は日本海側にフェーン現象をもたらすなど,直接的な影響によって高温をもたらすと考えられるが,後者は本州に接近しないため台風直接の要因以外で高温となっている可能性が高い.</p><p></p><p> 各台風カテゴリーの3つの経路パターン割合の差についてχ2検定を行ったところ,高温台風と雨台風の間で有意な差が認められた.高温台風と風台風の間,風台風と雨台風の間では,台風経路パターンの割合の差に有意な差が認められなかった.</p>

収録刊行物

キーワード

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390569000754921984
  • NII論文ID
    130008006712
  • DOI
    10.14866/ajg.2021s.0_91
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

問題の指摘

ページトップへ