チンパンジーiPS 細胞を用いたダイレクトニューロスフェア形成培養による初期神経発生の再現

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タイトル別名
  • Modeling of early neural development in vitro by direct neurosphere formation culture of chimpanzee induced pluripotent stem cells

説明

<p>私たちと最も近縁な原生生物であるチンパンジーの進化発生生物学は、ヒトの起源を理解するために不可欠です。しかし、技術的・倫理的制限からチンパンジーの個体を用いた胚発生の継時的な解析は困難です。この課題に対して、iPS細胞の分化誘導系を用いることで、培養下で発生現象を再現し、精査することが可能となります。そこで、私たちは、チンパンジーiPS細胞の樹立と、分化誘導培養による初期神経発生の再現に取り組みました。まず、成体チンパンジー由来の皮膚線維芽細胞に、リポフェクション法を用いてヒトの初期化因子を保有するプラスミドベクターを導入し、チンパンジーのiPS細胞を樹立しました。この細胞は、ヒトのiPS細胞と同様に、フィーダー細胞フリーの条件で維持することができます。次に、チンパンジーiPS細胞を用いてダイレクトニューロスフェア形成培養を行い、神経幹細胞を効率よく誘導することに成功しました。iPS細胞から神経幹細胞に至る分化誘導過程1週間に着目し、遺伝子発現と細胞の分化能について継時的に解析した結果、段階的な遺伝子発現の変化が明らかになり、エピブラストから放射状グリア細胞へ至る個体発生と同様な発生運命の進行が再現されていることが明らかになりました。また、発生段階特異的な発現を示す遺伝子としてCUZD1遺伝子を新たに特定し、この遺伝子が神経発生や種特異性に関与する可能性について検証するため、機能解析を進めています。本ダイレクトニューロスフェア形成法は、ヒトやニホンザルのiPS細胞に対しても適用可能であり、発生段階の進行速度における種差も認められています。 以上より、本実験系はチンパンジーの初期神経発生の根底にある分子細胞基盤を明らかにし、ヒトの脳進化について理解するために有望なツールとなると考えられます。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390569258153030016
  • NII論文ID
    130008029078
  • DOI
    10.14907/primate.36.0_17_3
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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