ニホンザルのロコモーション時における拇指の重要性-手指手掌圧分布の分析から
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- 平崎 鋭矢
- 京都大・霊長研
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- Sellers William I.
- Univ. Manchester
書誌事項
- タイトル別名
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- Importance of the pollex during locomotion in Japanese macaques: an analysis of hand pressure distribution
抄録
<p>手はマニピュレーション器官であるとともに、ヒト以外の動物においては重要なロコモーション器官でもある。したがって、手の進化を理解するためには、マニピュレーション時とロコモーション時の手の動きを分析し、 2つの大きく異なる力学的要請の下で手が取る戦略を探る必要がある。本研究では、拇指を含む手の各部位がロコモーションにどのように寄与しているかを調べるために、ニホンザル2頭(成体オス) を被験体として、木製歩行路での四足歩行、水平ポール(直径49mm) 上での四足歩行、および垂直ポール(直径49mm) 上での木登りの際の手指手掌圧分布を、圧力マット(Bigmat 1/4、ニッタ) を用いて空間分解能5mm で計測した。 速度の統制は行わず、被験体が自然な速度でシンメトリカルな歩行を行った際のデータを分析した。これまでに得られた結果から、各指のロコモーションへの寄与の程度は、拇趾と他の指の間でロコモーション様式によって異なることが明らかになった。水平ポール上を歩くとき、拇趾は身体を支持し、安定させるのに大きく関与していた。拇指はポールを挟んで他の指と反対側に配置され、拇指と外側指の中手骨頭付近、および手掌の外縁でポールを把持してた。拇指以外の指は、ポールと接触していたが、力はほとんど加えられていなかった。一方、垂直登攀時には、親指は他の指と並んだ姿勢で支持体に接して、圧を見る限り支持力や推進力の発生にはほとんど関与していないようであった。 垂直登攀時には第2~5指が高い圧を示しており、重要な役割を果たしていることが示唆された。水平歩行路上での四足歩行では、体重や床反力のほとんどが指間パッドを介して伝達されているようで、拇指や他の指のロコモーションへの寄与は小さいようであった。 拇指のロコモーションにおける重要性は、今回の計測条件の中では、水平ポール上歩行で最も高く、垂直木登りで最も小さかった。</p>
収録刊行物
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- 霊長類研究 Supplement
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霊長類研究 Supplement 36 (0), 39-39, 2020
日本霊長類学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390569258153274624
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- NII論文ID
- 130008029157
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- 本文言語コード
- ja
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- データソース種別
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- JaLC
- CiNii Articles
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用不可