霊長類間の神経支配パターン比較に基づくヒトのヒラメ筋羽状筋部と足底筋における新たな系統発生学的仮説

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  • A new phylogenetical hypothesis on the bipennate part of the soleus and plantaris muscles in human based on the comparison of the nerve innervation pattern among the primates

抄録

<p>足底筋は哺乳類全般で重要な役割を担うが、霊長類においてはその役割の一部がヒラメ筋に引き継がれている (Hanna and Schmitt, 2011)。ヒトのヒラメ筋前面には羽状筋部があり、前から入る独立した神経枝 (前枝: Ramus anterior; Ra) に支配される (Sekiya, 1991)。 ヒラメ筋羽状筋部と足底筋は、神経束レベルで支配神経が共同幹や交通を有し、由来の近縁性が示唆されている (Okamoto et al., 2013)。霊長類間でヒラメ筋羽状筋部と足底筋の神経支配様式を比較することで、ヒトの直立二足歩行への適応に伴う両筋の系統発生を考察した。ワオキツネザル6 側、クモザル1側、リスザル1側、ニホンザル1側、テナガザル2側、オランウータン1側、チンパンジー2側、ヒト6側 ( 足底筋欠如例3側含む) のホルマリン固定標本を使用し、実体顕微鏡を用いて脛骨神経の神経束分岐パターンを解析した。ヒト全例にRaが認められた。先行研究同様、Raと足底筋枝は共同幹を形成するか交通を有した。ワオキツネザル全例にRa相当の支配神経 (Ra相当枝) が認められ、足底筋も存在した。Ra相当枝はチンパンジー2/2側、テナガザル1/2側にも確認された。足底筋はニホンザル、オランウータン、チンパンジー1/2側に存在した。Ra相当枝と足底筋が共存する場合、両者は共同幹を形成するか交通を有した。ヒトから最も遠い系統のワオキツネザル全例にRaと足底筋が存在するが、ヒト以外の霊長類ではRaが認められないものも、足底筋が欠如するものも存在した。下腿屈筋群は、腓腹筋およびヒラメ筋のRaに支配されない部からなる群と、深層屈筋群の2つに分けることができ、Ra支配部と足底筋は深層屈筋群に分類された。よって、ヒラメ筋Ra支配部は足底筋を含む下腿屈筋群と近い由来の可能性があり、これが霊長類全体の共有原始形質である可能性が示唆された。ヒトは直立二足歩行の適応に際し、ヒラメ筋全体の発達に伴ってRa支配の羽状筋部が恒常的となり、由来の近い足底筋もよく残存している、という系統発生を考えたい。</p>

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390569258153442816
  • NII論文ID
    130008029094
  • DOI
    10.14907/primate.36.0_17_2
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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