金融政策はジレンマを乗り越えられるか

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  • 均衡利子率の推計から示唆されること

抄録

黒田日銀総裁体制2期目の金融政策運営はジレンマを抱えている。2% 物価安定目標の実現にはまだ相応の時間がかかる中、その早期達成を最優先として金融緩和をさらに強化すると、副作用への懸念は強まる。一方、緩和の正常化を急いだり枠組みの変更にまで踏み込んだりすれば、金融環境は不安定化し景気回復を遅らせることになる。このジレンマを乗り越える1つのカギは、政策を変更せずとも金融緩和の効果が今後高まっていくかどうかにある。経済の実力が高まっていけば、政策金利の操作目標が仮に同じであっても、緩和の景気刺激効果は強まっていく。金融緩和策のメリットが増大すれば、副作用の問題は相対的には和らぐだろう。本稿では、景気を刺激も抑制もしない中立的な金利水準である「均衡利子率」(自然利子率とも呼ばれる)を推計し、金融緩和の効果が今後高まっていくかどうか検証する。推定の結果、複数のモデルから、わが国の均衡利子率は近年上昇傾向にあることが示唆される。さらに、潜在成長率、企業設備投資など他の経済指標からも同様の傾向がうかがわれる。日本の均衡利子率は着実に高まってきており、その傾向が今後も続けば、政策効果、つまり金融緩和のメリットも増大していくと予想される。

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詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390569567968903680
  • NII論文ID
    130008041638
  • DOI
    10.50878/niraopinion.38
  • ISSN
    24362212
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用可

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