全球非静力学大気モデルにおける粒径解像エアロゾル微物理モジュール: モデルの記述と検証

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  • Size-Resolved Aerosol Microphysics in a Global Nonhydrostatic Atmospheric Model: Model Description and Validation

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抄録

<p> エアロゾル粒子の輸送・除去過程とそれらの雲や気候への影響は、粒子の大きさに強く依存する。近年の計算機の発展に伴って、このようなエアロゾルの粒径を解像するビン型スキームを大循環モデルや化学輸送モデルの上で開発することが可能となってきた。ビン型スキームは、核形成や併合などの微物理過程によるエアロゾルの粒径分布の変動を実験室や観測の知見に基づいて陽に表現できる。本研究では、全球非静力学大気モデルNICAM (Nonhydrostatic Icosahedral Atmospheric Model) で稼働するエアロゾルモジュールSPRINTARS (Spectral Radiation-Transport Model for Aerosol Species) について、2モーメントのビン型モジュール (SPRINTARS-bin) を開発した。これは、NICAMに結合されている従来の質量ベース(1モーメント)のエアロゾルモジュールSPRINTARS-origの代わりとなるものである。NICAM-SPRINTARSモデルは、領域から全球規模のシミュレーションを様々な解像度で行うことのできるシームレスなマルチスケールモデルである。本研究では、典型的な気候モデルの水平解像度(~230km)を用いて、気象場を再解析データにナッジングしたNICAM-SPRINTARS-binの計算を行い、同じ解像度を用いた従来のモデル (NICAM-SPRINTARS-orig) の計算および観測データとの比較を行った。観測との比較は、AERONET (AErosol RObotic NETwork) 観測網における500nmでのエアロゾル光学的厚さと440-870nmでのオングストローム指数、GAW (Global Atmospheric Watch) 観測サイトにおけるエアロゾル数濃度、EUSAAR (European Supersites for Atmospheric Aerosol Research) およびGUAN (German Ultrafine Aerosol Network) 観測サイトでの粒径ごとのエアロゾル数濃度について行った。NICAM-SPRINTARS-origと比べて、NICAM-SPRINTARS-binでは超微小粒子の高緯度域への長距離輸送が計算されるとともに、オングストローム指数や全エアロゾルの数濃度は高く、観測とより整合していた。これは、超微小エアロゾルの数濃度を決める微物理過程を解像することと、除去過程の粒径依存性を陽に表現することの重要性を示している。しかしながら、粗大粒子の数濃度は、従来の質量ベースのスキームと新たに開発した微物理スキームの両方で過小推定された。粒径分布が観測と異なる理由を理解するためには、より高い空間解像度でモデル計算を行うことに加え、様々な排出量データや二次有機エアロゾル生成スキームを用いることや、異なるエアロゾル種の間での併合過程や黒色炭素のエージング効果を導入することが必要である。</p>

収録刊行物

  • 気象集誌. 第2輯

    気象集誌. 第2輯 99 (3), 621-648, 2021

    公益社団法人 日本気象学会

参考文献 (89)*注記

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