日本の冷温帯林および中間温帯林の成立史

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タイトル別名
  • Vegetation history of Japanese cool-temperate and mid-temperate forest
  • ニホン ノ レイオンタイリン オヨビ チュウカン オンタイリン ノ セイリツシ

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抄録

日本列島の最終間氷期以降の植生変遷における代表種はスギであることが花粉分析結果に示されている。また,スギ以外の主要な樹種はマツ科針葉樹や落葉広葉樹であり,現在の冷温帯域に分布するブナ林や暖温帯の常緑広葉樹林が後氷期以前に広範囲に成立していたとは考えにくい。むしろ,コナラ亜属を主とする落葉広葉樹林が広範囲に分布していたと考えられる。このような推論は,現在の気候的極相林の気温減率をもとにした平行移動による復元とは異なるものであり,後氷期以前の冷温帯域と推定される地域をブナ林に代表させることはできない。その意味で中間温帯域の多様な植生は気候的な移行帯として,ブナ林の分布域の変動を知る上でも興味深い。福島県の太平洋側平野部を主とした花粉分析結果は,後氷期後期の植生変遷を以下のように示唆している。約4000年前以前には広範囲に分布していたブナを交えた落葉広葉樹林域は,南部を中心に約3000年前にかけてモミ林が発達し同時にカシ林も分布を拡大した。この間,北部でブナ林の分布域は縮小するが約2000年前から約1000年前にかけて再び増加した。約2000年前以降,各地ともにコナラ亜属を主とするが,モミ林の南部での分布拡大は地点間で不連続になり,ブナ林の南北における分布の連続性を不明瞭にした。約1000年前以降,マツ林の増加とともにモミ林が減少しナラ林を中心に南部ではカシ林が増加し,北部ではイヌブナ・ブナ・ナラ類を主とする森林が成立した。

収録刊行物

  • 植生史研究

    植生史研究 11 (2), 61-71, 2003

    日本植生史学会

被引用文献 (5)*注記

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