琵琶湖・早崎内湖干拓地外の造成ヨシ帯におけるゲンゴロウブナ(コイ科フナ属)の産卵: 産着卵のDNA 種判別にもとづく確認

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  • Spawning of <i>Carassius cuvieri</i> (Cyprinidae) in an artificially developed reed zonealong the Lake Biwa coast, outside of the reclaimed Hayasaki Lagoon, as revealed by DNA identification of field-collected eggs

抄録

<p>ゲンゴロウブナはコイ科フナ属に属する琵琶湖固有の魚類だが,現在は漁獲量が激減し,個体数の減少により絶滅危惧種に指定されている.かつて琵琶湖の東北岸にあった早崎内湖は,本種の最大の産卵場であったが,1970 年に全面干拓され,個体群の減少に大きく影響したと推測されている.本種を含むコイ科魚類(ニゴロブナやホンモロコなど)の資源回復のため,琵琶湖岸に人工のヨシ帯が造成されているが,これが本種の産卵場として利用されているかは確認されていない.そこで本研究では,早崎内湖干拓地の外側の琵琶湖岸に2002–2004 年度に造成されたヨシ帯において,水面近くの植物体に産み付けられている産着卵を採集し,これをDNA 種(亜種)判別することにより,当該ヨシ帯がゲンゴロウブナの産卵場になっているかを調べた.調査領域は,植生や地形にもとづいて以下の3 つに分けられた: 最も沖側に位置しヤナギ属の樹木が優占するエリアA; ヨシが優占するエリアB; ヨシ帯裏側の開水面であるエリアC.2018 年5 月11 日の13:00–13:40 にかけてこの調査領域の中で産着卵を採集した.卵群サンプルの採集時には,採集地点のGPS データを取得し,後日地図上にマッピングして採集エリアと産卵魚種との対応関係を調べた.解析の結果,エリアA では卵が採集されなかったが,エリアB では9 地点から194 個,エリアC では7 地点から174 個が採集された.前者から 80 個,後者から56 個の卵(合計136 個)をランダムに選んで塩基サイト特異的PCR による属判別を行ったところ,全てフナ属の卵と判定された.続いて同様の手法による種・亜種判別を行ったところ,判別に成功した合計127 個の卵のうち79 個(62.2%)はゲンゴロウブナの卵と判定された(残りはニゴロブナまたはギンブナの卵).エリア別にみると,エリアB では41.3%,エリアC では92.3%の卵がゲンゴロウブナと判定され,統計的にも有意にエリアC でゲンゴロウブナ卵の割合が高いことが判明した.以上の解析結果から,調査を行った造成ヨシ帯の特に裏側にある内湖的な開水面は,ゲンゴロウブナの産卵場所となっていることが確認された.</p>

収録刊行物

  • 伊豆沼・内沼研究報告

    伊豆沼・内沼研究報告 15 (0), 31-45, 2021-06-30

    公益財団法人 宮城県伊豆沼・内沼環境保全財団

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390570010597829632
  • NII論文ID
    130008059754
  • DOI
    10.20745/izu.15.0_31
  • ISSN
    24242101
    18819559
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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