胃MALTリンパ腫の診断と治療

  • 大野 仁嗣
    天理よろづ相談所病院 血液内科 天理よろづ相談所 医学研究所
  • 大花 正也
    天理よろづ相談所病院 消化器内科

書誌事項

タイトル別名
  • Clinical features and treatment of gastric MALT lymphoma
  • イ MALT リンパシュ ノ シンダン ト チリョウ

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説明

<p>胃MALTリンパ腫は,胃に発症する悪性リンパ腫の40%を占め,低悪性度B細胞リンパ腫に分類される.心窩部症状,嘔気などの非特異的な消化器症状を訴えることが多いが,検診で受けた上部消化管検査で異常を指摘されることもある.多発びらん・潰瘍,敷石状粘膜,早期胃癌IIc様陥凹,隆起性病変などの多彩な内視鏡所見を呈する.腫瘍細胞は小型ないし中型の胚中心細胞様の形態を示し,粘膜固有層で浸潤・増殖する.CD20,CD79a,BCL2陽性,CD5,CD10,CD23,BCL6,cyclin D1陰性である.6–26%の症例にt(11;18)(q21;q21)/API2-MALT1転座が認められる.転座は生検材料のFISH検査で検出する.約8割の症例はLugano分類のⅠ期またはII1期の限局期である.我が国では,胃MALTリンパ腫患者のHelicobacter pylori陽性率は90%である.H. pylori感染の診断法は,上部消化管内視鏡検査下に実施される検査法と,内視鏡検査を必要としない検査法がある.H. pylori陽性限局期胃MALTリンパ腫では,除菌治療が第一選択である.一次除菌の成功割合は67.5–92.6%,二次除菌の成功割合は83.9–98.0%で,除菌治療による胃MALTリンパ腫の奏効割合は50–80%である.治療効果判定には,Wotherspoon分類またはGELA分類が用いられる.t(11;18)/API2-MALT1は多くの研究で除菌治療抵抗性のバイオマーカーであることが明らかになっている.除菌治療抵抗例やH. pylori陰性胃MALTリンパ腫では低~中線量の放射線治療を実施する.Lugano分類II2期以上,Ann Arbor分類III期以上の進行期の症例では,リツキシマブ単剤投与や化学療法との併用治療を実施するが,症状がない場合や,低腫瘍量である場合はwatchful waiting policy(慎重な経過観察)を適用してもよい.</p>

収録刊行物

  • Tenri Medical Bulletin

    Tenri Medical Bulletin 24 (1), 49-62, 2021-12-25

    公益財団法人 天理よろづ相談所 医学研究所

参考文献 (29)*注記

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