嗅覚障害の診断と治療 近未来への展望

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  • 第121回日本耳鼻咽喉科学会総会教育講演 嗅覚障害の診断と治療 近未来への展望
  • ダイ121カイ ニホン ジビ インコウ カガクカイ ソウカイ キョウイク コウエン キュウカク ショウガイ ノ シンダン ト チリョウ キン ミライ エ ノ テンボウ

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抄録

<p> 新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) 患者の多くが嗅覚障害の自覚症状を有するため, 嗅覚障害の診断と治療の重要性がクローズアップされてきた. 耳鼻咽喉科医には, これまで以上に嗅覚障害に十分な備えをもって診療に取り組むことが求められている.</p><p> 嗅覚検査には閾値検査, 識別検査と同定検査の三つの要素を兼ね備えた形式が望ましい. 基準嗅力検査は, 検知域値で閾値検査を, 認知域値で閾値検査と同定検査の性格を有しており, 識別検査の要素を取り入れた改良を試みる必要がある. 基準嗅力検査の問題点として検査後の室内に立ち込める悪臭が挙げられるが, 脱臭装置の改良やにおい吸着板を壁に装着した防臭室の開発なども期待される. 認知症スクリーニングにおける嗅覚検査の有用性が明らかになっているが, 本邦では研究用としてスティック型とカード型の嗅覚同定能力検査キットが市販されている. 嗅覚障害の原因部位診断は経験を要するが, 近年のイメージング研究により嗅覚障害では原因疾患にかかわらず嗅球の萎縮と成熟嗅細胞減少を認めることが示唆されている.</p><p> 嗅覚研究の課題としては上記のほか, 嗅上皮マーカーの開発, 経鼻的薬物投与方法, 嗅覚刺激療法, 運動療法, 異嗅症の治療法, および COVID-19 に伴う嗅覚障害の診断などが挙げられる. 世界に先駆けて嗅覚障害診療ガイドラインを発刊した本邦では, 耳鼻咽喉科学における嗅覚研究分野の裾野は広がりつつあり, さらなる発展を期待したい.</p>

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