贈与が織りなす社会関係

書誌事項

タイトル別名
  • Social Relationships through Gifts
  • 贈与が織りなす社会関係 : 現代南インドにおけるヒンドゥー寺院を事例に
  • ゾウヨ ガ オリナス シャカイ カンケイ : ゲンダイ ミナミインド ニ オケル ヒンドゥー ジイン オ ジレイ ニ
  • A Study of Religious Gift-Giving Practices in a Hindu Temple
  • 現代南インドにおけるヒンドゥー寺院を事例に

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説明

<p>本論文は社会を想像/創造する宗教的贈与すなわち寄付を、その実践の現場となる寺院と受け手のバラモン寺院司祭の視点から描く。対象とするのは、司祭が聖職者と同時に自ら寺院管財人も務める南インドの私設ヒンドゥー寺院である。そこでは、信者と特定の司祭はある種のパトロン-クライアント関係を結んでいるが、その要となっているのは寄付である。信者からの寄付は寺院の宗教活動と経営のみならず、司祭やその家族の生活を支える経済的基盤でもある。しかし、神への「信愛」やその「恩恵」という宗教的規範を媒介することで、両者の関係は依存に陥ることなく、司祭の尊厳が保持されるものになる。</p> <p>神への「信愛」や「恩恵」は、聖なる存在を相互行為の対象とし、社会関係に位置づけるユートピア的社会の想像力にかかわる。先行研究では、こうした宗教的規範は聖俗を分かち、その非対称性を再生産するものとして捉えられてきた。しかし、近代以降寺院を取り巻く政治・経済・社会的環境は大きく変容した。それは司祭や寺院が体現する宗教的理念や理想、伝統から想像/創造される社会とは対照的でさえある。本論文は事例を通して両者の間のせめぎ合いとともに、いわば変化のなかの不変として価値づけられる寺院司祭の生の形式と社会関係を描く。そして、それらを可能にしているのは寺院という具体的な場における対面的贈与をめぐる相互行為と、そのなかで生み出され、再定義されてゆく宗教規範の潜在力であることを明らかにする。</p>

収録刊行物

  • 文化人類学

    文化人類学 85 (4), 711-729, 2021

    日本文化人類学会

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