広汎子宮頸部摘出後妊娠症例の予後の検討

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  • Obstetric outcomes of radical trachelectomy for cervical cancer : a retrospective review
  • コウハン シキュウ ケイブ テキシュツ ゴ ニンシン ショウレイ ノ ヨゴ ノ ケントウ

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抄録

<p>広汎子宮頸部摘出術は早期浸潤子宮頸癌に対する唯一の妊孕性温存手術であるが,術後妊娠症例の管理に関しては一定の見解に達していない.2005~2018年の間に当施設で子宮頸癌に対して広汎子宮頸部摘出術後を施行した62症例のうち術後妊娠に至った症例に関して,婦人科治療時の臨床背景,周産期予後について後方視的に検討した.当施設で広汎子宮頸部摘出術を施行した62例中15例が妊娠に至っておりその妊娠率は24%,妊娠に向けた具体的な活動が確認できなかった38例を除くと妊娠率は最大62.5%であった.妊娠症例の70.5%で何らかの不妊治療を要していたが,その大半は治療後2年以内に妊娠に至っていた.妊娠に至った15例は分娩後も無病生存を維持している.妊娠成立後は妊娠15~20週ごろからの入院管理とし,分娩様式は妊娠37週での帝王切開分娩を原則としていたが,流産が1例,早産が12例(うち1例は予定帝王切開),正期産が4例であった.妊娠34週以後の妊娠継続を指標にその予測因子を検討したところ,従来の早産マーカーは両群で差異を認めなかったが,妊娠34週以後の妊娠維持が可能であった8例は全例広汎子宮頸部摘出術時に頸管縫縮術を施行していた.生児を得た16例の分娩週数中央値は妊娠33週5日で,うち13例が出生後NICU管理となったが,予後の確認できない1例を除く15例は月齢相当の発育を認めている.今回当施設での広汎子宮頸部摘出術の妊娠症例を検討した結果,妊娠率は良好であったが自然妊娠症例は少なく,積極的な生殖補助医療の導入を早期から考慮すべきであると考えられた.妊娠予後に関しては,広汎子宮頸部摘出術施行時の頸管縫縮が妊娠維持にとって重要であることが示唆された.今後,広汎子宮頸部摘出術後妊娠症例の流早産を予測する因子を解明することが,長期の妊娠管理を要する症例の個別化に重要であると考えられた.〔産婦の進歩73(3):197-206,2021(令和3年8月)〕</p>

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