金華山島の野生ニホンザルにおいて群れ外オスの攻撃がメスに及ぼす影響の検討

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タイトル別名
  • The aggression of non-troop males against females and its influence on female behaviors in wild Japanese macaques on Kinkazan Island

抄録

<p>霊長類では,多くの種でオスからメスに対する攻撃が見られる。こうした攻撃は群れに在籍するオスによるものも多いが,種によっては群れ外のオスによる攻撃も観察される。特に単雄複雌群を形成する種では群れ外オスからの攻撃がメスにとって大きな脅威となっており,群れの社会構造にも影響を及ぼしている可能性が指摘されている。一方で,複雄群を形成する種でも群れ外オスからの攻撃は見られるが,これまでに複雄群を形成する種で群れ外オスの攻撃を定量的に評価し,それがメスに及ぼす影響を調べた研究はほとんど行われていない。そこで本研究は,交尾期にあたる2019年9月~11月に宮城県金華山島の野生ニホンザルB1 群を終日追跡し,群れを訪れた群れ外オスからオトナメスに行われた攻撃,およびその前後のメスの行動や負傷の有無を記録することで群れ外オスの攻撃がメスに及ぼす影響を検討した。 調査期間中,群れ外オスは1 日に平均6.2 頭確認され,群れ外オスからメスへの攻撃は1 時間あたり平均0.52 回観察された。これは,メスが群れオスを含む全オスから受けた攻撃の約28%を占めていた。また,群れ外オスからの攻撃頻度が高い日ほど,メスが新たに負傷する確率も高くなっていた。これらの結果は,群れ外オスの攻撃がメスにとって脅威になっていたことを示している。加えて,群れを訪れる群れ外オスが多い日ほど,メスの休息時の凝集性が高まっていたことが分かった。この結果は,メスが群れ外オスから攻撃されるリスクに応じて凝集性を変化させていたことを示唆している。この傾向は調査期間中に群れへの出入りを繰り返していたαオス(山口・風張, 2020)が群れにいた日に不在の日よりも強くなった。また,αオスがいた日には不在の日よりもメスが群れ外オスに攻撃される頻度が顕著に低くなったことから,αオスの存在は群れ外オスの攻撃への抑止力になっており,メスたちは群れ外オスの攻撃に対抗するために休息時にαオスの周囲に凝集していたと考えられる。</p>

収録刊行物

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390570939492723584
  • NII論文ID
    130008091100
  • DOI
    10.14907/primate.37.0_27_1
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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