たばこ煙中の放射性物質ポロニウムについて

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  • Radioactive Polonium in Tobacco Smoke

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説明

要 旨<br> 背景:平成23年3月の東日本大震災に引き続き起こった福島原発事故以降、国民の放射線被害についての関心は高い。しかしたばこ煙中にも放射線が含有されている事実は知られていない。本研究の目的は過去の論文からたばこ煙中ポロニウムについて調査報告することである。<br> 方法:Pub-Medで「polonium」かつ「smoke」、「cigarette」、「tobacco」の2語で検索し得られた70論文、そのうち総説論文9論文および最近5年間の原著論文の内容を調査し、ポロニウムの毒性、由来、肺がんとの関連性、受動喫煙との関係などについてまとめ考察した。<br> 結果:1986年のチェルノブイリ原発事故前後で論文数の増加はなかった。自然界に存在するポロニウムの中でポロニウム210の半減期が138.4日と最も長い。魚介類に比較的多く含まれ、α線を放出し安定な鉛206に壊変する。α線は皮膚の角質層を通過しないため外部被爆より内部被爆が問題となる。ポロニウム210がたばこ葉中に含まれていることは1940年代に既に判明していた。主流煙のみならず副流煙中にも含有されている。肺から吸収されたポロニウム210は気管支上皮細胞に沈着しα線を放出し、細胞内DNAを傷害し発癌を促す。ポロニウム210はその他の放射線の100倍も強力であり、たばこ特異的ニトロサミンなどの発癌物質との複合汚染で強力な発癌作用を現わす。肺がんの組織型はポロニウム210を含有するたばこにより過去40年間で扁平上皮癌から腺癌の頻度が増加した。 また、たばこ会社の内部文書によるとポロニウム210については既に40年以上前から知っており、事実を外部に報告しないように内部操作した。<br> 結論:たばこ煙に含まれるポロニウムについてはマスコミにも取り上げられず、隠された重大な事実である。我が国でも生体内でのポロニウム210測定が喫緊の課題である。

収録刊行物

  • 禁煙科学

    禁煙科学 vol.6 (09), 1-6, 2012

    日本禁煙科学会

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