巻頭言

DOI
  • 本田 秀夫
    信州大学医学部子どものこころの発達医学教室

抄録

<p>2020年は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に世界中が翻弄された年として、歴史に残るでしょう。わが国でも、これまで当たり前すぎて意識すらしてこなかった日常生活の多くが根底から覆されました。自閉スペクトラム症に関連することとしては、全国的な学校の一斉休校、大学等のオンライン授業導入、医療機関や福祉施設の一部におけるクラスター発生による影響、そして経済の悪化による今後の福祉政策への影響の懸念などが挙げられます。 本学会も、8月に予定されていた第19回研究大会が中止となった他、各地で予定されていた資格認定講座も中止となりました。今年度の学会活動の、いわば「最後の砦」となっているのが、学会誌です。幸いなことに、このような困難な状況にもかかわらず、多くの論文投稿が寄せられました。査読を経て、本号では全部で9編の論文が掲載されております。うち6 編が、1事例に対する支援の実践の報告でした。 日頃、現場で自閉スペクトラムの当事者に対して試行錯誤しながら取り組んでいることをまとめて報告することは、きわめて意義のあることです。自分たちのやってきたことを振り返り、到達点と課題について整理するとともに、先行論文にあたって比較することによって、新たな展望が開ける可能性があります。 今回掲載された論文の多くは、一再ならず査読者との間でやりとりを経ています。 本学会誌は、わが国における自閉スペクトラム症の支援の水準の向上を目ざして、なるべく現場からの実践報告を掲載する方針をとっております。とはいえ、なんでもよいわけではありません。投稿された論文が、学術面および倫理面において論文として少しでも良質なものとなるよう、査読者は妥協せず真摯なコメントを返しています。それに著者がきちんと対応することによって、論文としての質が格段に向上したとき、最終的に受理を提案する査読者のコメントにもある種の達成感を感じることがしばしばあります。学会報告と論文発表との最も大きな違いであり醍醐味と言えるのは、この査読者によるブラッシュアップにあるのではないでしょうか。 これまで学会発表はしたことがあっても論文執筆は敷居が高いと感じていた会員もおられることと思います。今回のコロナ禍を機に、新たな発表の場として本学会誌への投稿をぜひ検討していただければと思います。産みの苦しみは学会発表より大きいかもしれませんが、査読者とのやりとりを経て最終的に自分の書いたものが掲載された誌面を見たときの達成感は、自信と次のステップへの強いモチベーションとなると思います。 </p>

収録刊行物

  • 自閉症スペクトラム研究

    自閉症スペクトラム研究 18 (1), 1-1, 2020-09-30

    NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390571028379765632
  • NII論文ID
    130008094138
  • DOI
    10.32220/japanacademyofas.18.1_1
  • ISSN
    2434477X
    13475932
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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