4歳6か月男児の下顎左側乳犬歯早期脱落歯に対しての1考察

DOI
  • 岩田 こころ
    徳島大学大学院医歯薬学研究部口腔科学部門臨床歯学系小児歯科学分野
  • 黒厚子 璃佳
    徳島大学大学院医歯薬学研究部口腔科学部門臨床歯学系小児歯科学分野
  • 赤澤 友基
    徳島大学病院小児歯科
  • 森 浩喜
    徳島大学病院小児歯科
  • 岩本 勉
    徳島大学大学院医歯薬学研究部口腔科学部門臨床歯学系小児歯科学分野 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科小児歯科学・障害者歯科学分野

書誌事項

タイトル別名
  • Premature Loss of the Mandibular Left Deciduous Canine in a 4-Year and 6-Month-Old Boy

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抄録

<p>乳歯の早期脱落の原因は,齲蝕,歯周疾患,外傷,咬合性外傷,ブラキシズム,全身疾患に関連するものが報告されている。しかし,稀に早期脱落の原因を特定することに苦慮する症例に遭遇することがある。今回われわれは,特発性乳犬歯早期脱落症例に対し,原因の追求を試みたのでその概要を報告する。</p><p>患児は初診時年齢4歳6か月の男児で,下顎左側乳犬歯の早期脱落を主訴に来院した。初診時,下顎左側乳犬歯は脱落しており脱落窩を認めた。ブラキシズムによる咬耗を認めたが,齲蝕や外傷の既往は明らかでなく,かつ血液検査,細菌学的検査においても異常はみられなかった。そこで,脱落乳犬歯を実体顕微鏡で観察したところ,視診で識別困難な亀裂程度の破折線を認め,同歯のCT検査を施行したところ,歯冠の尖頭部表層から歯髄腔にまで連続した歯冠破折が生じていたことが明らかとなった。以上より,歯冠破折を契機に生じた歯髄壊死とそれに続く根尖性歯周炎の病態に,更なるブラキシズムや側方運動による過度な咬合圧が加わったことで,歯周組織の急激な破壊が進み,早期脱落につながったのではないかと推察した。</p><p>乳歯は永久歯に比べ石灰化度が未熟で,その構造的特徴から歯の亀裂も生じやすい。そのうえで歯に過度な力が加わる場合,微小亀裂から歯髄に到達する歯冠破折が生じ,場合によっては早期脱落の一因になる可能性があることが示唆された。</p>

収録刊行物

  • 小児歯科学雑誌

    小児歯科学雑誌 58 (3), 204-211, 2020-11-25

    一般財団法人 日本小児歯科学会

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