自然発症高血圧ラットにおいて硫化水素による膀胱弛緩反応は週齢により異なる

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抄録

<p>【目的】我々はこれまでガス状伝達物質の硫化水素(H2S)がラット膀胱における内因性弛緩因子である可能性を報告し、加えて膀胱機能障害を呈する自然発症高血圧ラット(SHR)の膀胱ではH2Sに対する反応性が減弱する事も報告した。またSHR は 6 週齢にて既に高血圧を自然発症する一方、高血圧に伴う膀胱機能障害は少なくとも12週齢では認められないが、18週齢では顕著である事が報告されている。よって、SHRにおいてH2Sによる膀胱弛緩反応の減弱レベルは加齢に伴い増悪する可能性が考えられる。そこで本研究では、H2S誘発性膀胱弛緩反応、膀胱におけるH2S含量及びH2S生合成酵素群(CBS、MPST、CAT)の発現レベルを12及び18週齢のSHR間で比較した。</p><p>【方法】12及び18週齢の雄性SHR を実験に用いた。(1)ウレタン麻酔下(0.8 g/kg, ip)にて膀胱へカテーテルを挿入後、vehicleまたはGYY4137(H2Sドナー、10-8 to 10-6 M)を膀注(2.4 ml/h)し、膀胱内圧測定を行った。(2)カルバコール(10-5 M)により予め収縮させた膀胱組織片に対するNaHS(H2Sドナー、1×10-8 to 3×10-4 M)誘発性弛緩反応をorgan bath studyにて比較した。(3)膀胱組織中の内因性H2S含量をメチレンブルー法により測定し、H2S生合成酵素群の発現レベルはウエスタンブロット法により評価した。</p><p>【結果】(1)12週齢SHRにおいて、GYY4137投与群はvehicle投与群に比して有意に排尿間隔(ICI、排尿頻度の指標)が延長した。一方、18週齢SHRでは両投与群間にてICIに有意な差は認められなかった。(2)NaHSによる膀胱弛緩反応は、12週齢SHR に比して18週齢SHRにおいて減弱していた。(3)膀胱組織中の内因性H2S含量は12週齢SHR に比して18週齢SHRにおいて高値であった。また、18週齢SHRの膀胱組織では12週齢SHRに比して CBS、MPST及びCATの発現亢進が観察された。</p><p>【結論】週齢が進むにつれSHRの膀胱におけるH2S誘発性膀胱弛緩反応が減弱し、その代償として膀胱のH2S産生が亢進する可能性が考えられた。このH2Sによる膀胱弛緩反応の減弱の差がSHRの膀胱機能障害の程度が週齢により異なる一因と推測される。</p>

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