一般病院での臨床研究への挑戦:whyとhow

DOI
  • 吉村 芳弘
    熊本リハビリテーション病院サルコペニア・低栄養研究センター

抄録

<p> 臨床研究は大学や研究機関に所属する研究者だけが行うものではありません。しかしながら,一般病院に勤務する多忙な医療者の義務でもありません。(上長は部下に臨床研究を押し付けてはいけません。)それでは臨床研究はどこの誰がどのように行うべきなのでしょうか。</p><p> 「臨床研究」,「エビデンス」という言葉が多用される昨今,その意味を正しく理解しているか,私もよく自問自答します。もしあなたが「ガイドラインや教科書をチェックすれば十分」だと思っているのならば,一度立ち止まってみてほしいと思います。ガイドラインや教科書は常に新しい情報が更新されており,古いものには現在では間違った情報と思われる記述も散見されます。</p><p> エビデンスは医療や臨床の土台となるものです。同時に医療者自身で少しずつ構築していくピラミッドのようなものです。臨床の新しい発見や気づきは臨床研究という手順を踏んで世の中に発信すべきです。ただし,臨床研究の目的はそれだけではありません。われわれ医療者が自分の好きな研究を続けたいと思うのは,純粋に“知りたいから”,私はそう思います。みなさんの中にも,小学校の夏休みにワクワクしながら自由研究をした経験のある方も多いでしょう。私も,悪戦苦闘を重ねた自分の研究成果が何の面識もない異国の査読者や編集者に認められ,初めての英語論文として世に出たときの喜びは,まるで昨日の出来事のように覚えています。</p><p> リハビリテーションは医療の土台です。現代の医療は個別化かつ細分化され,診断方法や治療方法も多様化していますが,そもそも適切なリハビリテーションなくして現代医療は成り立ちません。高齢化,慢性炎症,低栄養,安静,絶食,フレイル,サルコペニア,医療連携,など患者が抱える様々な要因を我々は考え,適切に対処する必要に迫られています。</p><p> 医学には説明あるいは理解できないことが未だにたくさん残っています。地道な臨床研究が,たとえささやかでも,世界を変える知見に結びついてほしい,また自分でもそういう臨床研究をしたい,と心から思っています。</p><p> 臨床研究を医療者が自分自身で企画,実践することで,科学的に医療行為の効果や障害の原因などを眺める視点が身につきます。また,データを通して患者の臨床経過をフォローすることができます。さらに,ガイドラインや教科書の記述を批判的(科学的)に吟味する能力が身につきます。臨床研究を行うことでガイドラインや教科書に書かれていることは我々が知りたいことのほんの一部に過ぎないことがわかるでしょう。この点で臨床研究は医療者の自己研鑽の強力なツールだと私は思っています。</p><p> 本講演では「一般病院で臨床研究を企画・実践するにはどうしたらよいか」,「一般病院の医療者は臨床研究をすべきなのか」という2つの命題に対する現時点での私からの提言をしたいと思っています。</p>

収録刊行物

  • 理学療法学Supplement

    理学療法学Supplement 48S1 (0), C-46-C-46, 2021

    公益社団法人 日本理学療法士協会

詳細情報 詳細情報について

  • CRID
    1390571968054349184
  • NII論文ID
    130008133510
  • DOI
    10.14900/cjpt.48s1.c-46
  • 本文言語コード
    ja
  • データソース種別
    • JaLC
    • CiNii Articles
  • 抄録ライセンスフラグ
    使用不可

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