日韓の近代化における利他思想の比較文化的考察 -沈大允と廣池千九郎の道徳・倫理思想を中心に-

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  • ニッカン ノ キンダイカ ニ オケル リタ シソウ ノ ヒカク ブンカテキ コウサツ : チンダイイン ト ヒロイケ センキュウロウ ノ ドウトク ・ リンリ シソウ オ チュウシン ニ

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抄録

アメリカ型資本主義を中心とする新自由主義は、自己利益だけを追究する「自由」の拡大とともに、世界中における利潤獲得競争の激化を招き、各国間の富の格差の拡大、貧困、不平等、不公正の蔓延など、多くの難問を生み出している。時代を遡れば、19世紀のフランスの学者A・コントは、蔓延していた利己主義(egoism)へ対抗概念として「利他主義」(altruism)という造語を考え出したのである。もちろん、利他主義の中核をなす「利他愛」は19世紀の産物ではなく、すでにキリスト教の「隣人愛」、仏教の「慈悲」、儒教の「仁」などで表される概念の中に内包されている。 さて、アメリカ型市場主義がグローバル化の波に乗って世界を席巻している昨今の状況は、19世紀以来、アジア諸国、特に韓国と日本において、いわゆる「ウエスタン・インパクト」によって近代化がなされた状況と非常に似ている部分がある。当時、西洋文化・文明の挑戦に対し、日韓両国がどのように対応し、いかなる思想的基盤によって、いかに自国のアイデンティティーを確立するか、ということであった。  本論では、そのような近代化の時代の中にあって、独自の道徳・倫理思想を確立し、それによって自国民を啓蒙しようとした思想家として、韓国の沈大允(1806年~1872年)と日本の廣池千九郎(1866年~1938年)に注目したいと思う。本論では、沈大允と廣池千九郎のそれぞれの利他思想を、その時代的背景も管見しながら、比較検討する。

収録刊行物

  • 言語と文明

    言語と文明 9 69-88, 2011-03-30

    麗澤大学大学院言語教育研究科

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