<論文>日本とドイツにおける協同組合金融機関の歴史的比較研究

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タイトル別名
  • <Article>Comparative Historical Study on Cooperative Banks in Japan and Germany
  • 日本とドイツにおける協同組合金融機関の歴史的比較研究
  • ニホン ト ドイツ ニ オケル キョウドウ クミアイ キンユウ キカン ノ レキシテキ ヒカク ケンキュウ

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抄録

ドイツと日本の工業化の過程においては、協同組合が地域経済を支える金融機関として重要な役割を果たした。ドイツでは19世紀中葉に生まれたライファイゼン貸付組合、後のライファイゼンバンク、VR バンク、日本では20世紀初頭からの産業組合、後の農業協同組合、JA がそれにあたる。これらの協同組合金融機関は戦後に入ってからも両国で発展を続け、高度経済成長期をへて民間大銀行にも劣らない規模の中央組織を形成しながら成長してきた。ところが、こうした両国の共通性にも関わらず、21世紀に入る前後から日本とドイツにおける協同組合金融機関の社会的評価は大きく分かれている。日本では農協無用論が論じられる一方、ドイツでは協同組合銀行の評価が特にリーマンショック以降大きく上昇し、持続可能な経済を実現できる担い手と高い評価を受けるようになっている。本論文は、これまでの研究史でほとんど扱われてこなかった協同組合金融機関の日独両国での発展と近年の評価の大きな分岐に着目し、このような変化がどうして出現してきたのかを歴史的な日独比較を通じて明らかにする。特に、協同組合金融機関がその歴史的誕生時から、農村部の日常的な経済活動を支える金融需要を少額融資という形で満たすという、地元密着型の金融活動をしてきたことの意義に注目する。本論文は、ドイツと日本の協同組合金融機関の歴史的展開と戦後の活動を考察する中で、こうした地域経済の小規模で多様なニーズに対応した金融活動の継続性を検討した。その結果、日本の協同組合金融機関では、農業以外に融資をするべきではないとする政治的な圧力によって多様な地元の金融需要に応えることが難しくなり、余った金の投資に失敗する一方、ドイツにおいては持続可能な社会のためのさまざまな地元の小規模な金融需要に応えていく方法を拡大させながら発展していることが明らかになった。

収録刊行物

  • 国際日本研究

    国際日本研究 12 45-62, 2020

    筑波大学人文社会科学研究科国際日本研究専攻

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