新出『因縁集』 : 資料紹介

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抄録

談義書は近年の説話研究において脚光を浴びつつある資料群であるが、本稿では『因縁集』と仮に題する新出の談義書の資料紹介を行う。本書は漢字片仮名交じり文体で、本来は上下巻構成・説話154条であったが、現在は末尾を欠く下巻のみ現存し71条の説話を収める。現存の上巻は成立経緯の異なる冊子三部の合冊で、安土桃山時代~近世最初期の書写の『三国伝記』説話抄出、同時代書写の『撰集抄』説話抄出、近世中期以降書写の典籍各種からの説話抄出の三者からなる。『三国伝記』からの抄出引用には、同書の伝本・受容資料の乏しさを補う資料的意義が認められる。『撰集抄』からの抄出説話の伝本系統は広本系の本文で、なおかつ類例の少ない漢字片仮名交じり文体である点が注目される。江戸中期以降の書写部分は、近世前期に版行の仏教類書の抄出が主体で、編者の精力的な典籍渉猟の様相が看取される。

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