寒冷地向け超強力小麦新品種「こしちから」の育成

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タイトル別名
  • A New Hard Winter Wheat Cultivar, "Koshichikara"
  • カンレイチ ムケ チョウキョウリョク コムギ シン ヒンシュ 「 コシチカラ 」 ノ イクセイ

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抄録

「こしちから」は秋播のパン・中華麺用硬質小麦で、グルテニン遺伝子Glu-D1dとGlu-B3gを有する超強力小麦である。1996年5月に「盛系C-138(後の東北209号)」と「東北205号(ハルイブキ)」との人工交配を行い、派生系統育種法で育成した。2013年8月に育成を完了し、2014年4月に品種登録出願を行った。播性はIV、出穂期および成熟期は寒冷地の基準で“やや早”であり、寒冷地の硬質主力品種「ゆきちから」より出穂期は1日早く、成熟期は1日遅い。稈長が89cmのやや短稈種で、穂型は紡錘状、ふ色は赤渇で有芒である。「ゆきちから」と比較して子実重と千粒重は同程度で容積重は大きい。子実は硬質で粒の形と大きさが“中”の赤粒種、外観品質は“上の下”である。「ゆきちから」より蛋白質含量がやや多く、灰分含量がやや少ない。「ゆきちから」と比較して製粉歩留が高く、ファリノグラムの吸水率は同程度で、バロリメーター値は高く、エキステンソグラムの伸張抵抗はかなり強く、生地の力の程度も大きい。粉の色相は「ゆきちから」と比較して明度が低く、赤みと黄色みが高い。育成地における製パン適性試験では「ゆきちから」より比容積および官能評価点がやや優れ、「1CW」と「HRW」より劣った。耐寒性は“やや強”だが、耐雪性は「ゆきちから」より劣る“やや弱”である。耐倒伏性は“強”、穂発芽性は“かなり難”で「ゆきちから」に優る。縞萎縮病抵抗性は“強”、赤かび病と赤さび病抵抗性は“中”、うどんこ病抵抗性は“やや弱”である。栽培適地は東北・北陸地域の根雪期間80日以下の平坦部で、パン・中華麺用およびブレンド用としての普及が期待される。

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