『源氏物語』夕顔巻の再検討 : 「 ひとりごつ」の意味に注目して

書誌事項

タイトル別名
  • 『 ゲンジ モノガタリ 』 ユウガオカン ノ サイケントウ : 「 ヒトリ ゴツ 」 ノ イミ ニ チュウモク シテ
  • A study on hitorigotsu of Yugao in "Genji-Monogatari"

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説明

夕顔をめぐる謎は、どうやら随身の勘違いから始まったようである。源氏の発した「をちかた人にもの申す」という問いは、随身にではなく夕顔側(遠方人)に向かって発せられたものだったが、源氏が顔を出してさしのぞいていたこと、そして古歌の一節が朗詠されたことで、つい随身は自分に質問されたと思い込んで、「夕顔です」と答えてしまったのだ。そのため物語展開が変更されたことで、読者の誤読が生じてしまったのである。  本稿では「ひとりごつ」に注目してみた。この「ひとりごつ」は、決してつぶやきめいた「独り言」ではなく、歌の一節が朗詠されたものであるから、その声は一部始終を覗いていた夕顔側にも届いていたはずである。だからこそ夕顔側もそれに応じて、「心あてに」歌を返したのである。このように解釈すれば、決して夕顔側(女側)から歌を読みかけたわけではなかったことになる。  看過されていた「ひとりごつ」に注目することで、従来の誤読の様相がはっきりと見えてくる。要するに夕顔巻の謎は、随身の勘違いから発生したものであり、それを読者が誤読したことが最大の原因だったのである。

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