木材乾燥に対する意識の位相に関する研究(2) : 木材乾燥による製品差別化と原木乾燥の意義

  • 堺 正紘
    九州大学農学部附属演習林粕屋地方演習林

書誌事項

タイトル別名
  • A Study on the Phases of Consciousness about Wood Drying (2) : On Product Discriminations by Wood Drying and Effects of Log Seasoning
  • モクザイ カンソウ ニ タイスル イシキ ノ イソウ ニ カンスル ケンキュウ

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抄録

近年,生活様式や住宅供給構造の変化の中で木材の乾燥に対する関心が高まり,一方,スギ並材を中心とする人工林材の供給量の拡大が確実に予測される状況の中で,乾燥木材を地域林業の活性化のための差別化商品として位置づける動きが強まっている.しかし,乾燥木材供給の中核的担い手であるべき製材業者の木材乾燥に対する取り組みは必ずしも活発とはいえない.本報告では,乾燥木材の材質や経済性に対する製材業者の評価ないし考え方を全国の主要なスギ材産地の製材業者のアンケート調査によって分析し,乾燥木材供給の伸び悩みの要因として,一般的に考えられている乾燥コストの価格への転嫁の問題の外に,乾燥木材の材質や経済性に対する評価の低さがあることを明らかにしている.その概要は次のとおりである.1) 木材乾燥には,原木の天然乾燥,製材品の天然乾燥及び製材品の人工乾燥という3つの方法がある.その実施率は,原木天然乾燥が47%,製品の天然乾燥が38%,人工乾燥が19%,である.県別では原木の天然乾燥は秋田県と徳島県,製材品の人工乾燥は熊本県が高い.2) 天然または人工乾燥によって乾燥した乾燥木材の用途は,造作材と役物柱角が圧倒的に多く,両者で88%を占めている.しかし,それらが製材生産量に占める比率は概ね3割未満である.3)乾燥木材の材質に対する評価は,建築後のクレームの少ないこと,かび・虫等の被害の少ないこと,についてはかなり高い評価を得ている.しかし,割れ・ひび割れをはじめ,材の色・艶,反り・捻れ等の狂い,等についてはあまり高いとはいえず,評価のばらつきも大きい.4) 乾燥木材の経済性に対する評価は,乾燥木材を扱うと自社製品の商品のイメージや企業の信用が高まること,生材よりも需要が多く,販売力が大きいこと,についてはきわめて評価が高い.しかし,在庫率のロスの少なさ,梱包の中身の均質性,歩どまりの大きさ,価格の高さ,等については高いとはいえず,ばらつきも大きい.5)木材乾燥コストは1m^3当り概ね7,500~15,000円である.一方,乾燥木材の価格は生材と変わらないとするものが4割強である.したがって,現在の価格では乾燥コストをカバーすることはできないが,それも幾分損失がでる程度にとどまるとみられている.6)木材の人工乾燥については,スギ柱角は役物に限りその必要性を認めるものが圧倒的に多く,並材を含むスギ柱角全体に必要とするものは少数である.造作材は「できるだけ必要」を含めても53%に過ぎないし,一般構造材では7割弱が人工乾燥は不用と考えている.県別では,熊本県で人工乾燥の必要性を認めるものが最も多く,ついで秋田県が多いが,静岡県,徳島県及び宮崎県ではかなり少ない.7) 乾燥原木の材質に対する評価は,製品にしたときの色・艶の良さ,狂いの少なさ,かび等の少なさ,等は高く評価されているが,割れ・ひび割れ,鋸の切れ味,製品にしたときの挽肌,等の評価は低い.また,経済性については人工乾燥の期間の短縮,コストの低減,乾燥むらの減少,等の評価が高く,乾燥原木供給の増大を求めるものが多い.

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