生物学的指標による看護師の職業性ストレス測定の試み

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  • Measuring Job Stress among Hospital Nurses : An Attempt to Identify Biological Markers

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抄録

【目的】看護師の職業性ストレスに反応する生物学的指標について検討した. 【対象および方法】対象は某大学病院に勤務する看護師である.看護部を通して被験者を募り,被験 者に対し研究の目的,内容について直接十分な説明を行った.最終的に承諾の得られた者について は承諾書を交わした上で調査を実施した.調査内容は個人属性,質問紙によるストレス評価および 血液検査(生物学的指標)である.質問紙による職業性ストレス評価には,NIOSH 職業性ストレス 調査票,三木らの看護師のストレッサー35項目尺度を使用し,加えて一般的精神健康度を把握する 目的でGHQ28項目版も用いた.生物学的指標としてcatecholamine,cortisol,ACTH,hemoglobin A1C,hemoglobin,hematocrit,natural killer cell activityなどについて血液検査を実施し た.調査実施日に質問紙の回答と血液検査をあわせて行った.血液検査の項目の中には,日内変動 する項目も含まれているため,採血の時間をあらかじめ定め一斉に実施した.質問紙により得られ た職業性ストレス反応と血液検査結果との関連性の検討には,Pearsonの積率相関係数および他の 項目の影響をコントロールした偏相関係数の統計学的手法を用い評価を試みた. 【結果】131名の被験者の承諾が得られたが,主要な項目に記入漏れのある者等を除き,最終的に 128名を分析対象とした.平均年齢は30.0±7.4であった.dopamine,ACTH,hemoglobin A1C は結果数値が正規分布していなかったため,対数変換後のデータを分析に用いた.NIOSH 職業性ス トレス調査票では仕事のストレッサーの量的労働負荷,労働負荷の変動がNK cell activityと負の 相関を,仕事のコントロールがnoradrenalineと正の相関を示した.ストレス反応の抑うつは hemoglobin A1C と正の相関を示した.緩衝要因の家族・友人からの社会的支援はadrenalineと正 の相関(サポートが少ないと感じている者ほどadrenalineの値が高い)を示した.三木らの看護婦 ストレッサー尺度では,患者の死との直面がdopamineと負の相関を示した.しかし,いずれも強 い相関ではなかった.GHQ28においては血液検査結果との相関は認められなかった. 【結論】職業性ストレスの下位尺度と血液検査との間に若干の有意な相関が認められたものの,い ずれもそれほど強い相関ではなく,職業性ストレスに特異的に反応する生物学的指標を明らかにす ることはできなかった.今後は生物学的指標に関してより具体的な吟味が必要であり,また単なる 横断調査ではなく,対象者を経時的に追跡し縦断調査を行いながら生物学的指標の検討を進めてい く必要があるものと考えられた.

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