ヒノキ林における間伐区と無間伐区の遮断蒸発量の比較

  • 小松 光
    九州大学大学院農学研究院森林資源科学部門森林生態圏管理学講座

書誌事項

タイトル別名
  • Comparison of rainfall interception amounts between thinned and unthinned Chamaecyparis obtusa forest stands
  • ヒノキリン ニ オケル カンバツク ト ムカンバツク ノ シャダン ジョウハツリョウ ノ ヒカク

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抄録

間伐の有無による遮断蒸発量の違いを調べることは,間伐が森林の渇水緩和機能に与える影響を評価するうえで重要であるが,これまでその違いを計測によって調べた例はわずかしかなかった.最近,佐渡・栗田(2004)は,ヒノキ林に無間伐区,12%間伐区,21%間伐区を設定して水収支法から各区の遮断蒸発量を計測した.しかし,その報告における解析は,間伐の有無が比較的長期(月以上の時間スケール)の森林水収支に与える影響を把握するという目的からすると,遮断蒸発率(遮断蒸発量/林外雨量)の計算方法に問題があり,誤った結果と結論が導かれていた.そこで,本研究はその目的に合った遮断蒸発率の計算方法を採用して再解析することで,結果と結論を修正した.樹冠通過雨量計測期間の林外雨量は1282.2 ㎜,樹冠通過雨量は無間伐区,12%間伐区,21%間伐区でそれぞれ908.3 ㎜,909.2 ㎜,936.4 ㎜だった.樹幹流量計測期間における林外雨量は88.5 ㎜,樹幹流量は無間伐区,12%間伐区,21%間伐区でそれぞれ0.5 ㎜,0.7 ㎜,0.9 ㎜だった.これらのデータをもとにして,無間伐区,12%間伐区,21%間伐区の遮断蒸発率はそれぞれ29.7%,29.9%,28.0%と修正された.修正された遮断蒸発率をもとにすると,間伐の有無による遮断蒸発率の違いは,遮断蒸発計測で発生する誤差範囲内にあることが新たに指摘された.

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