アルツハイマー病の分子病態と治療 -特にアミロイドβ蛋白を標的として-
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- 大八木 保政
- 九州大学大学院医学研究院脳神経病研究施設神経内科
書誌事項
- タイトル別名
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- Molecular Pathology and Therapeutics in Alzheimer’s Disease : Amyloid 6-protein as a Therapeutic Target
- アルツハイマービョウ ノ ブンシ ビョウタイ ト チリョウ トクニ アミロイド ベータ タンパク オ ヒョウテキ ト シテ
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説明
アルツハイマー病(AD)は, 1906年にドイツのAlois Alzheimer博士が報告した初老期に発症する認知症(dementia)疾患である. 以前は65歳以上の痴呆症は老年痴呆症(senile dementia)と呼ばれていたが, 病理学的共通性から, 現在はアルツハイマー型老年認知症(senile dementia of Alzheimer type, SDAT)と呼ばれている. 近年の我が国における高齢化社会の進展とともにその患者数は増加しており, 現在200万人程度が今後300万人以上に達すると予想されている. AD脳における顕著な病理学的所見として, 多数の神経細胞の脱落, 老人斑(senile plaque, SP)と神経原線維変化(neurofibrillary tangle, NFT)がよく知られている. これまで多くの研究により, 時系列的には, まず早期にSPが出現し, その数年~10数年後より神経細胞脱落とNFTの形成が見られるとされている. 従って, 1980年代はSPの主要構成成分である不溶性アミロイド線維が研究されてきた. 1984~1985年目その主成分として約4-kDの蛋白が同定され, 現在はアミロイドβ蛋白(Aβ)と呼ばれている. 元々は, Aβは膜貫通型蛋白である前駆体蛋白(Aβ protein precursor, APP)が蛋白分解を受けることで細胞内小胞体(ER)/ゴルジ系において生成され, 細胞外に分泌されている可溶性蛋白である. それが何らかの理由で凝集・不溶化線維形成することがADにおける特異的メカニズムと考えられ, AD発症の分子機構解明のために, その生成プロセスや構造変化, 細胞毒性が長年にわたり精力的に研究されてきた. その根拠として, APP遺伝子が局在する21番染色体の3量体であるダウン症患者の脳でADのSP沈着が見られること, 家族性ADの原因であるAPP遺伝子やプレ劇職リン(PS)1およびPS2遺伝子の変異がAβ産生を促進することや, SDATの危険因子であるApoE-β4蛋白Aβ凝集を促進することなどが挙げられる. さらに最近, APP遺伝子重複が家族性ADの一因であることが報告されたことで, 少なくとも主要原因の一つとしてAβが直接かかわっていると理解されている. 本総説では, Aβの細胞毒性メカニズム, 特に我々が取り組んでいる細胞内Aβの知見, およびそれらを標的とする近未来のAD治療戦略について解説する.
収録刊行物
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- 福岡醫學雜誌
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福岡醫學雜誌 97 (9), 261-268, 2006-09-25
福岡医学会
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詳細情報 詳細情報について
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- CRID
- 1390572174717005184
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- NII論文ID
- 120002564571
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- NII書誌ID
- AN00215478
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- DOI
- 10.15017/18508
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- HANDLE
- 2324/18508
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- NDL書誌ID
- 8605053
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- ISSN
- 0016254X
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- PubMed
- 17134029
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- 本文言語コード
- ja
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- 資料種別
- journal article
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- データソース種別
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- JaLC
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- 抄録ライセンスフラグ
- 使用可