β細胞の供給源と増殖について

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  • 稲田 明理
    九州大学大学院医学研究院先端医療医学糖尿病遺伝子分野

書誌事項

タイトル別名
  • The Source of β Cell and Proliferation
  • vサイボウ ノ キョウキュウ ゲン ト ゾウショク ニ ツイテ

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抄録

近年,生活習慣病の一つである2型糖尿病の患者人口が急増し,合併症の進行と併発やそれに伴う医療費の高騰,QOLの低下が深刻な問題となっている.特に糖尿病性腎症が重症化すると透析が必要になり,これが医療費を一気に押し上げ,QOLを急低下させるなど,健康面,経済面,精神面,どの点においてもダメージは大きい.最近の研究で,一旦糖尿病を発症し罹病期間が長期化するほど,β細胞数は減少することが分かってきた.また,元来,日本人はβ細胞を増やす能力やその機能を高めるような能力が欧米人に比べて少なく,糖尿病になりやすいといわれている.したがって,β細胞の保護や機能低下,細胞量の低下を防ぎβ細胞を新生・増加させることが,根本的な治療へとつながると考えられる.しかし,これまで糖尿病に使用されている治療薬をみると,残存している数少ないβ細胞から強制的にインスリンを分泌させかえって疲弊させたり,β細胞の保護や増殖作用が乏しいものが多かった.最近,β細胞のアポトーシスを抑制し再生を促す機能があると唱えられているインクレチン関連薬(GLP-1 受容体作動薬,DPP-4 阻害薬)が開発され,使用頻度が急速に増加している.Follow up analysis等によりその有効性と安全性が示されている.そこで,膵臓β細胞を再生・増殖する「再生医療」が注目されている.これは,β細胞の供給源である幹細胞を見つけ出し,刺激してβ細胞を分化誘導・増殖させて,インスリン不足を根本的に解消するという画期的なものである.世界各国では,「幹細胞の同定」,つまりβ細胞の供給源の研究が盛んに行われてきた.近年の研究で,膵管上皮細胞から一部β細胞が供給されていることが明らかになり,その分化機序の解明が試みられている.本稿では,β細胞の供給源と増殖について最近の研究成果を概説する.

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