ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤Suberoylanilide Hidroxamic Acidは 骨肉腫細胞株において,二つのプログラム細胞死を選択的に誘導する

DOI HANDLE Web Site オープンアクセス
  • 岡田 貴充
    九州大学大学院医学研究院臨床医学部門外科学講座整形外科学分野
  • 花田 麻須大
    九州大学大学院医学研究院臨床医学部門外科学講座整形外科学分野
  • 中島 康晴
    九州大学大学院医学研究院臨床医学部門外科学講座整形外科学分野

書誌事項

タイトル別名
  • The Selective Induction of Programed Cell Death in Osteosarcoma Cells by Histone Deacetylase Inhibitor Suberoylanylide Hydroxamic Acid

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抄録

骨肉腫の治療成績は近年飛躍的に改善されたが,再発・転移例の予後は依然として不良である.再発・ 転移例は制癌剤や放射線療法に抵抗性を持つことが多く,この問題の克服が骨肉腫の予後向上に重要であ る.骨肉腫の薬剤耐性には多剤耐性因子であるP-glycoprotein(P-gp)やMRP1 の関与が示唆されており, 一方放射線耐性機序としてはapoptosis 抵抗性の獲得が挙げられる. 我々は以前P-gp,MRP1 を発現する多剤耐性骨肉腫細胞株MNNG/ADR を樹立したが,この細胞は P-gp,MRP1 による制癌剤耐性だけでなく,apoptosis 抵抗性により放射線耐性を有しており再発・転移例 の良いモデルと考えられた. ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACI)のsuberoylanilide hydroxamic acid(SAHA)は新規抗腫瘍 薬として注目されている.薬剤感受性のある骨肉腫細胞株MNNG ではSAHA はcleaved-PARP の発現 を上昇させ,細胞周期のsub-G1 分画を上昇させアポトーシスを誘導して抗腫瘍効果を発揮する.アポ トーシス抵抗性を持つ多剤耐性骨肉腫細胞株MNNG/ADR に対してはLC3-ⅠとLC3-Ⅱの発現を誘導し 電子顕微鏡でautophagosome の形成を促進しており,programed cell death type2 に分類されるオート ファジー細胞死を誘導して抗腫瘍効果を発揮していることが分かった.この事実はSAHA は腫瘍細胞の 持つ細胞死に対する抵抗性によって,誘導する細胞死のタイプを選択できる可能性を示唆している. 現在の化学療法や放射線療法による抗腫瘍治療は,腫瘍細胞に主としてapoptosis による細胞死を誘導 する.これらの治療に耐性を示す腫瘍細胞は,多剤耐性因子の発現やapoptosis 抵抗性を獲得している可 能性が考えられる.アポトーシスと異なる細胞死である「オートファジー細胞死」をも誘導するSAHA は, これらの治療抵抗性の腫瘍に対する効果が期待できる.

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